2019 Fiscal Year Research-status Report
原価企画に対するエンジニアの受容とコンフリクト解消の方策
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18K12905
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Research Institution | SBI Graduate School |
Principal Investigator |
小林 英幸 SBI大学院大学, SBI大学院大学 経営管理研究科, 教授 (20790124)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原価企画 / 設計者の心理 / 行動的原価企画 / トヨタ自動車 / 本田技研工業 |
Outline of Annual Research Achievements |
トヨタ自動車(以下、トヨタ)と本田技研工業(以下、ホンダ)の原価企画の実態を比較調査するなかで、次の2点が明らかになってきた。 一つは、両者で原価企画のメインプレイヤーが異なるということである。トヨタでは設計者が原価企画の主役であり、目標原価が達成されるように図面を描くことを目指す。一方、ホンダでは調達バイヤーが原価企画の主役であり、目標原価が達成されるような見積りをサプライヤに期待する。その結果、トヨタでは目標原価が達成されるのが常であり、ホンダでは目標原価の達成に慢性的に苦労している。ホンダでは、性能を優先するために目標原価の達成が困難な図面を渡されたバイヤーが、サプライヤとの交渉で苦労する、という図式になっているのである。この点を論文にまとめた。 二つ目は、メインプレイヤーである設計者の心理に注目することで、原価企画の達成を促進する要因、またそれを阻害する要因が明らかになってくるであろうということである。 トヨタでは、目標原価の達成に向けて設計者を動機づけるための施策を次々に行ってきた。それらの施策は、たとえばCCグラフを用いた理詰めの目標設定であり、また部品主査による原価ポテンシャルの見極めと、それを用いた成立性検証の実施などである。それでもなお、原価企画に対する設計者の不満は根強い。必ずしも目標達成への動機づけが成功しているとは言えないのである。 その理由は、原価企画にまつわる諸施策が、常に管理する側の発想のもとに経理の視点で策定され、設計者の心理をほとんど考慮に入れていなかったためである。この点に着目し、設計者の心理に注目する「行動的原価企画」が必要であると結論付け、そのことを提唱する論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ホンダでのインタビュー終了後、トヨタへの2度目のインタビューを始めたところ、今般の新型コロナ禍で、4部署中1部署へのインタビューが終わったところで4か月ほど停滞することになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
トヨタの残り3部署へのインタビューを終えたのち、行動的原価企画の観点からトヨタ・ホンダの原価企画の長所・短所を分析する。その結果を用いて、これからの原価企画のあるべき姿を考察する。加えて、影響システムとしての管理会計の望ましい形についても検討したい。
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Causes of Carryover |
ホンダへのインタビューが効率的に実施できたこと、トヨタへの再インタビューが1月を最後に、新型コロナの影響で停滞したことなどにより、次年度使用額が発生した。 次年度はトヨタへの再インタビューの遅れを挽回するとともに、学会発表の機会を複数回設けることによって、旅費を中心に直接経費が消費されることを想定している。
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Research Products
(2 results)