2018 Fiscal Year Research-status Report
企業情報の開示前における情報漏洩の可能性に関する実証分析
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18K12910
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
森脇 敏雄 北九州市立大学, 経済学部, 講師 (60780830)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 会計学 / 適時開示 / 情報漏洩 / フェア・ディスクロージャー・ルール / 投資家間の情報の非対称性 / 沈黙期間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,企業情報が開示前に漏洩している可能性を実証的に明らかにすることである.当初の予定通り,平成30年度の前半は,分析に必要なデータベースの構築作業を行なった.データベースの内容は,年次決算短信の公表前における(1)適時開示の件数,(2)アナリストの予想の改訂の有無,(3)業績関連ニュースの報道件数,(4)ビッド・アスク・スプレッドの動向,(5)沈黙期間の有無とその長さである.(5)については,手作業でのデータ収集が必要なため,企業のディスクロージャー・ポリシーに関する情報が掲載されているウェブページのURLを特定し,ウェブスクレイピングの技術を用い,見出しおよび本文に関するテキスト情報を入手した.その結果,東京証券取引所に上場する企業のうち,沈黙期間を設定している企業は全体の4割弱であることが明らかとなった.さらに,沈黙期間の設定期間は企業によって異なり,決算期末から決算発表日までを沈黙期間とする企業が最も多いことも確認された.平成30年度の後半は,それらのデータベースをもとに,年次決算短信の公表前における情報の非対称性の動向について,予備的な調査を実施した.その結果,これまでの先行研究で明らかにされている通り,年次決算短信の公表が近づくにつれて,情報の非対称性の代理変数であるビッド・アスク・スプレッドは拡大することを確認している.分析結果については,令和元年9月に開催される日本会計研究学会第78回大会で報告する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,平成30年度の前半はデータベースの構築作業に取り組むことができた.時間を要することが予想されたウェブスクレイピングの技術を用いた情報収集についても,予定した内容のデータを取得できている.他方で,企業情報が開示前に漏洩している可能性を検討するために,分単位の株価および出来高のデータを利用する予定であったが,分析計画を見直し,日次ベースのビッド・アスク・スプレッドの動向に注目することにした.このように,当初の計画と異なる変数を用いて分析を行っている部分はあるものの,総じて,研究計画の遂行は順調であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究実績を踏まえ,次年度は,年次決算短信の公表前に沈黙期間を設定しているかどうかによって,投資家間の情報の非対称性の程度が異なるかどうかを分析する.第1に,沈黙期間の設定が企業による自発的な意思決定であることを踏まえ,沈黙期間を設定している企業の特性を調査する.第2に,沈黙期間を設定している企業とその他の企業の間で,年次決算短信の公表前における投資家間の情報の非対称性の程度に差が観察されるかどうかを検証する.得られた分析結果については,令和元年9月に開催される日本会計研究学会第78回大会で報告する予定である.
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Causes of Carryover |
データベースおよび消耗品の購入計画の変更のため,次年度使用額が生じている.当該使用額については,翌年度分として請求した助成金と合わせて,消耗品の購入に充当する計画である.
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