2020 Fiscal Year Research-status Report
企業情報の開示前における情報漏洩の可能性に関する実証分析
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18K12910
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
森脇 敏雄 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (60780830)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 会計学 / 適時開示 / 情報漏洩 / フェア・ディスクロージャー・ルール / 投資家間の情報の非対称性 / 沈黙期間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,企業情報が開示前に漏洩している可能性を実証的に明らかにすることである.2020年度は,2018年度および2019年度に実施したデータの整備および基礎的な分析をもとに,リサーチデザインの改善および論文執筆を行った.分析結果については,「企業の情報環境と利益発表前の投資家行動の関連性」と題し,2020年12月12日および13日に開催された2020年度日本経済会計学会秋季大会で報告した.その後,英文査読誌への投稿を目標とし,追加的な分析を行い,論文執筆を進めた.リサーチデザインの改善として,これまでは年次決算短信の公表前におけるビッド・アスク・スプレッドの動向に注目していたが,それに加えて,投資家による指値注文のキャンセル行動に注目した分析を行った.論文の最新版は,"Investors’ Behavior in the Pre-Earnings Announcement Period: Evidence from the Bid-Ask Spreads and Limit Order Cancellations"としてまとめており,学会報告および論文投稿に向けた準備は概ね完了している.発見事項を要約すると,(1)年次決算短信の公表前におけるビッド・アスク・スプレッドの水準は,株価,出来高,株式リターンの分散,デプスといった諸変数と関連性を持つこと,(2)ビッド・アスク・スプレッドは,年次決算短信の公表日の2日前から顕著に拡大すること,(3)年次決算短信の公表前におけるビッド・アスク・スプレッドの拡大は,注文の約定およびキャンセルの双方と関連して生じること,(4)年次決算短信の公表前にアナリスト予想が改訂されている場合には,年次決算短信の公表前におけるビッド・アスク・スプレッドの拡大は観察されにくいことを明らかにしている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度においては,沈黙期間の設定について,より精度の高いデータベースを構築することを予定していたが,その作業が遅れている.2021年度も継続して,データベースの改良を進める予定である.その他,分析期間の拡張および代替的なリサーチデザインの検討については,概ね予定通りの進捗である.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究実績を踏まえ,2021年度は,追加分析および論文執筆を完了させ,国内外での研究報告および英文査読誌への投稿を行う.追加分析では,第1に,利益発表前の投資家行動の指標として,最良気配だけでなく,全ての板情報を利用した指値注文の提示およびキャンセルに関連した指標を構築する.第2に,利益発表前の投資家行動を日次単位で追跡していたが,より短い時間間隔での分析に拡張する.第3に,利益発表前の投資家行動を決定する要因として,同業他社の利益発表の状況を踏まえた分析を行う.第4に,沈黙期間の設定による影響を分析するために,データベースの改良を進める.
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Research Products
(2 results)