2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on dynamic capability which improves management accounting ability
Project/Area Number |
18K12914
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
吉川 晃史 関西学院大学, 商学部, 准教授 (20612930)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ビジネス・エコシステム / ダイナミック・ケイパビリティ / 管理会計 / 管理会計能力 / 中小企業 / 事業承継 / アメーバ経営 / トヨタ生産方式 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,中小企業の管理会計のレベルアップ事例の検討を通じて,1)ビジネス・エコシステムの相互作用を通じて,個々の企業の管理会計能力をいかに変化させるか,2)管理会計能力を変化させるダイナミック・ケイパビリティとしては,エコシステムレベル,個社レベルでどのようなものがあり,どのように作用するかを検討するものである。 本年度においては,管理会計能力の進展研究の成果として,吉川・吉本(2020),吉川(2021)を研究成果として発表した。 吉川・吉本(2020)では,アメーバ経営の導入後10年以上を経てその運用に課題を抱え,リーン生産方式を導入することによって,両者の連携効果が図られ会計計算が活用されるようになったヒライの事例を検討した。社会的文化コントロールの支援のもとで,財務アウトプットコントロールと行動コントロールの連携プロセスにより,形骸化していた会計計算が機能し始めることを明らかにし,複数のコントロールシステムが補完しながら,機能することを述べた。 吉川(2021)では,ヤスダモデルの事業承継プロセスの事例から,同社の管理会計システムの長期的な変化について検討した。同社は,経営改善と事業承継という2つの課題に直面し,事業転換を図るための管理会計の活用と経営者の長年の経験や勘に頼った経営から,計数管理への転換を目指すこととなった。後継者が事業承継に向けて管理会計を含めて社内コミュニケーションを進めるためのマネジメントシステムの重要性を理解し,マネジメントの経験を積みながら計数管理の導入に時間がかけられた。本事例研究により,管理会計システムの導入がマネジメント方法に関する経営者と後継者の摺り合わせが行われる場となり,事業承継と管理会計システムが進展することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は,ビジネス・エコシステムの観点から管理会計能力を変化させるダイナミック・ケイパビリティおよび管理会計能力の変化プロセスを明らかにすることである。ケイパビリティを変化させて長期的な競争優位性をもたらす組織ルーティンたるダイナミック・ケイパビリティのうち,管理会計そのものを変化させるダイナミック・ケイパビリティについての研究を進めている。 研究調査については,新型コロナウイルスの影響のためフィールドワークを予定通りには出来ていないものの,Webインタビューの活用により,データ収集を行いつつ,論文として研究成果を出してきた。ただし,管理会計変化をもたらすダイナピック・ケイパビリティの機能を明らかにする最終的な整理のための追加の調査と分析が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究調査について,コロナの制約を受ける可能性がある。可能な限りのフィールドワークを行うものの,webによるインタビューを活用しながら調査収集のフォローを行う。 これまでに実施した文献調査やインタビュー調査,参与観察を基礎として,これまでの発見事項の一般性や特殊性について,管理会計能力を高める組織内,組織間のダイナミック・ケイパビリティに関する分析を進める。 上記事項について,学会報告をして,論文執筆・投稿を行い研究成果として発表していく。
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Causes of Carryover |
コロナの影響でフィールドワークとその結果得られたデータの分析を十分にできなかったため。フィールドワークの旅費とデータ分析のための人件費に利用する。
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