2020 Fiscal Year Research-status Report
政府統計とサーベイ実験を用いたケアペナルティの検証
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18K12918
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
竹内 麻貴 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (70802106)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 母親ペナルティ / サーベイ実験 / コンジョイント実験 / オンライン実験 / 雇用者差別 / ケアペナルティ / 親への移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ケアを担う人が賃金やその他の生活面に被るペナルティを明らかにし,「ケアペナルティ研究」として発展させることである.今年度は,i)母親における雇用上の不利益を検出するためのウェブサーベイ実験(コンジョイント実験)の実施・データ分析,ii)親への移行が健康に与える影響の精緻な分析を行った. i)での被験者は,インターネット調査会社にモニター登録している,日本全国20歳~69歳の男女である.実験では,大企業での人事に関わることになったという仮定のもと,1被験者に対してA 「大企業で営業職(正社員)を中途採用する場合,どちらの候補者を採用しますか.」と,B 「大企業で営業職(正社員)を中途採用した場合,どちらの人物の方が仕事に対してより熱心に打ち込んでくれそうだと思いますか.」のいずれかの質問文が表示される(サンプルサイズは1,000ずつ).被験者は,候補者2名のプロファイルを見て,当てはまると思う1名を選択した(タスク数は4).分析では母親にくわえ,女性および親であることによる不利益も検討した.分析の結果,まず実験Aより,①女性や,子どもの年齢が低い人ほど中途採用されにくく,②被験者が女性の時にその傾向が強いことが明らかになった.また実験Bより,③男性被験者は,女性を仕事に打ち込んでくれそうと評価しないこと,④女性被験者は,1歳の子どもがいる人は中途採用したら仕事に打ち込んでくれそうと評価しないことが明らかになった. ii)では,「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査」(東京大学社会科学研究所パネル調査プロジェクト)のwave1~13のパネルデータを用い,固定効果モデルでの分析を行った.その結果,①親への移行によって健康状態は(とくに女性や出産を終えた時点において)よくなる,②健康状態の向上は妊娠してから3~4年続くことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたサーベイ実験の実施と分析を終え,一定の知見を得ている.また,昨年度に基礎的分析を終えていた親への移行が健康に与える影響についても,より高度な分析手法を用い精緻な検証を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
『21世紀成年者縦断調査』と『中高年者縦断調査』の個票データ利用申請を行う.利用許可が出るまでの期間,今年度行ったサーベイ実験の結果の論文化と,実験結果を踏まえた新たな実験を今年度中に行う予定である.
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Causes of Carryover |
当該助成金は,日本におけるCOVID-19の感染拡大をうけ,1回目のサーベイ実験に用いる調査票を検討し直した結果,実査が予定年度よりも1年遅れたため生じた.また,COVID-19により予定していた出張が中止となったことも要因である.当該助成金は,翌年度分として請求した助成金と合わせ,2回目のサーベイ実験に使用する.
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