2021 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsidering the devision of labour between urban and industrial sociology: Re-analysis of original sheets of surveys
Project/Area Number |
18K12922
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
武岡 暢 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90783374)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 職業 / 尾高邦雄 / 職業社会学 / アメリカ社会学 / 都市社会学 / 労働社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず今年度(最終年度)に実施した研究の成果として、尾高邦雄の職業社会学構想の検討がある。「職業」は近代社会を構成する重要な要素のひとつと見なされながらも、集中的にその検討が行われてきたとは必ずしも言えない。そうした状況のなかで例外的に職業を主題として取り上げたのが戦前の尾高邦雄であり、尾高による職業社会学構想であった。よく知られているように尾高は戦後、産業社会学や労働社会学といった領域名を掲げ、戦前の職業社会学の枠組みをほとんど引き継がなかった。しかしながら今年度に実施した研究によって明らかになったように、尾高の職業社会学構想には今日においても見るべき点が多くある。さらに、それが放棄されてしまった経緯には、第二次世界大戦における日本の言論統制の状況や、植民地支配の手段としての社会科学者による植民地調査があった。尾高が初めてフィールド調査を行ったのもこの植民地調査であり、そのなかで尾高は理論的にも方法的にも、職業社会学を放棄していくことになったのである。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果も、この尾高職業社会学の検討に反映されている。都市社会学と労働社会学の分野間分業において「すき間」領域として等閑視されることになってしまったのがまさにこの「職業」というテーマであった。それはおおむね戦前期までにおいては都市的問題としても、労働に関する問題としても、いずれのアプローチも可能な、しかも近代社会にとって重要な問題系を構成するテーマとなるはずであった。しかしながら戦前におけるその概念化は未だ経験的調査との接合が十分ではなく、戦後に流入したアメリカ型の計量社会学やより「科学的」なフィールド調査の陰で散逸してしまうことになる試みであった。
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