2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of Factors Enhancing Multi-Role Satisfaction among Employed Mothers: An International Comparison of Japan and Norway
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18K12924
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐野 潤子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 特任講師 (00802141)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 資産形成 / 意思決定 / 有職母親 / 家計貢献度 / ジェンダー平等 / 性別役割分業意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有職母親の就労継続の鍵となる複数役割満足感を高める要因の一つと考えられる資産形成に着目し、ジェンダー意識が本人名義の資産形成にどのような影響を与えているかをを探究することを目的とした。さらに、女性の社会進出が進んでいるノルウェーの有職母親と比較研究を行った。両国のWeb調査では、就労、子育てを担う現役世代(30歳以上55歳以下)の既婚女性の資産形成に着目した。ジェンダー意識(性別による役割分業意識)が日本の夫婦それぞれの金融資産形成に与える影響を、妻の就業形態別に検討し、ジェンダー平等が進んでいるノルウェーと比較した。ノルウェーでは、夫名義金融資産額と妻名義金融資産額の差は、夫と妻の年収の差に比例していた。しかし、日本では、妻がパートタイムや専業主婦の場合、夫婦間の金融資産額の差は、夫婦の年収の差に比例していなかった。日本の夫婦での金融資産額の差に影響を与えていた要因は、妻の家計決定度であり、妻が家計に関する意思決定を主にやっているほど、夫婦の金融資産額の差が小さくなっていた。日本では、妻の日常の家事・育児などの家庭内労働が世帯の資産形成に貢献していると考える傾向が高い。そのため、日本では夫の収入は夫のものではなく、夫婦のものであるとする考えが依然として支配的であり、生活費や貯蓄計画については主に妻が決めている夫婦が多かった。ノルウェーの場合は、夫婦で生活費などを負担し、夫婦共同で家計や資産形成の意思決定を行っている割合が高かった。日本の有償・無償労働の貢献が資産保有に反映される現状は、夫婦それぞれの名義で保有する金融資産額の格差是正につながり、ジェンダー不平等を見えにくくしていた。世界有数の長寿社会で生きていくためには、どちらか片方の資産に頼るのではなく、夫婦それぞれが資産形成を促進し、世帯全体の金融資産を増やすことが必要である。
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Research Products
(4 results)