2018 Fiscal Year Research-status Report
家族構造とジェンダーと労働市場に着目した自営業からの退出と退出後のキャリアの研究
Project/Area Number |
18K12927
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平尾 一朗 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (90740217)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自営業 / 非正規雇用 / 二重構造論 / 家族構造 / 社会階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は自営業からの退出後のキャリアを中心に研究を行った。先行研究において自営業と非正規雇用の類似性が指摘されていたため、本研究でも自営業と非正規雇用の退出後の雇用形態を比較した。とくに労働市場の二重構造論、人的資本論、家族構造の観点より比較した。分析では2015年SSM調査(社会階層と社会移動に関する全国調査)データを用いた。 自営業者と非正規雇用者が比較されやすいのは、労働市場の二重構造論の影響があるものと思われる。すなわち、内部労働市場は正規雇用者によって発展させられてきたとされるが、自営業者と非正規雇用者は二次的・外部的な労働市場を発展させてきたとされるためである。両者の退出後の雇用形態を比較分析したところ、労働市場の二重構造論に関する仮説が支持され、男性と女性の自営業者・非正規雇用者ともに、非若年層は内部労働市場に移動しにくく、二次的・外部的な労働市場における移動に制限される傾向があった。若年層が退出後に内部労働市場に移動しやすいのは、内部労働市場の制度的文脈に適合しやすいためであると思われる。また人的資本論の観点に従い両者をそれぞれの経験年数により比較した。自営業者と非正規雇用者ともに経験年数の長さは直接的に内部労働市場への移動のしやすさに影響を与えなかった。ただし自営業者は職歴において正規雇用の経験があれば内部労働市場への移動が発生しやすかった。家族構造の観点では、自営業者は成人した子の有無ですら退出に影響を与えるが、非正規雇用者は幼い子の有無までしか影響を与えない。つまり自営業者は非正規雇用者に比べ長期的な家族戦略を持つ可能性を指摘できる。 研究の進捗状況や成果は4回国内・国際学会で報告され、分析と解釈の改善を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は自営業からの退出メカニズムの研究と退出後のキャリアについての研究に分けられるが、前者の研究はすでに前年度に論文として公刊され、本年度に国際学会で報告されている。また、後者の研究は国内の学会で報告され、次年度に論文として公刊される予定である。そのため「おおむね順調に進展している」と自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
自営業からの退出メカニズムを分析する中で、家族従業への参入メカニズムを把握する必要が生じた。家族従業者は自営業者になる前になる場合や、一時的な仕事として就く場合など様々な可能性が想定される。自営業からの退出メカニズムを解明する上でも家族従業への参入メカニズムの把握は重要であるため、当初の研究計画にあった自営業からの退出メカニズムの把握と合わせて取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
資料収集やデータの整理業務が当初の予定ほど発生しなかったことが主な理由である。
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Research Products
(4 results)