2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12931
|
Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
北島 義和 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (70782952)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自然資源管理 / 紛争経験 / 北アイルランド / アクセス権 / レクリエーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、イギリス領北アイルランドの都市ベルファストに隣接する丘陵地(ベルファスト丘陵)をめぐって、その土地を所有する人々とそこをレクリエーションのため利用する人々との間で生じている対立的状況、すなわち「農村アクセス問題」の実態について、この地域で長期にわたって続いた武力紛争の経験に注目しながら、明らかにすることである。 本年度は、北アイルランドおよびベルファストの社会状況について文献による情報収集に努めると共に、8月27日~9月7日と2月16日~2月28日の二度にわたってベルファストおよびアイルランド共和国の首都ダブリンに渡航し、フィールドワークをおこなった。 具体的には、まずベルファスト丘陵に関わる各セクターの代表者から構成される組織であるBelfast Hills Partnershipのマネージャーと、その理事会においてレクリエーション利用者を代表する理事数名へのインタビューをおこなった。さらに、ベルファスト丘陵に関わる取り組みをおこなっている複数のコミュニティ組織の担当者にもインタビューを実施した。また、公文書館・公立図書館・大学図書館等において、農村アクセスやベルファスト丘陵に関わる資料の収集をおこなうとともに、ベルファスト丘陵の主要なレクリエーションスポットを歩き回り、その利用・管理状況について把握した。 現在までの調査から見えてきたのは、レクリエーション利用者、特にコミュニティ組織はしばしば、ベルファスト丘陵のレクリエーション利用を「紛争がもたらした地域の停滞からの脱出」という自らのプロジェクトを達成するためのひとつの手段として捉えているということである。他方で、インタビュー対象者の属性によって紛争や丘陵をめぐる経験には違いも見られた。 上記の成果は、自然資源管理研究と紛争後社会研究の架橋を目指す本研究の足がかりとなるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、Belfast Hills Partnershipの理事会において各セクターを代表している理事らにインタビュー調査等を実施し、それぞれのセクターの活動や見解を比較する予定であった。しかし、現在までに調査協力を得られたのはレクリエーションセクターを代表する理事のみであり、行政セクターと土地所有者セクターを代表する理事からは、快い返事をもらえていない。特に土地所有者は本研究にとって重要な調査対象であるが、調査依頼のためのアクセスルートが限られており、いまだインタビューの見通しは立っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
ベルファスト丘陵は広大な面積を有しており、その所有者・利用者は広範囲に渡っている。そして、本研究のため現地に渡航できる期間や費やせる資金は限られている。そのため、本研究が依拠する質的な調査方法では、Belfast Hills Partnershipのような組織を越えて全体状況を論じていくことはなかなか難しい。そのため来年度は、引き続きレクリエーション以外のセクターを代表する理事への調査ルートを探ることと並行して、今年度にインタビューをおこなったコミュニティ組織のうち目ぼしいものをいくつか取り上げて、より地域を絞ったインテンシブな調査の実施も試みたいと考える。また、Belfast Hills Partnershipやそれらのコミュニティ組織が主催するイベントの参与観察も実施予定である。
|
Remarks |
①研究発表「北アイルランドの農村アクセス問題・序説」、日本村落研究学会北海道地区研究会、2018年11月10日、於北海道大学 ②フォーラム「著者と語るアイルランド」、第26回アイルランド研究年次大会、2018年11月24日、於青山学院大学
|