2020 Fiscal Year Research-status Report
移民第二世代の教育と移民の親子への制度的支援に関する日韓比較研究
Project/Area Number |
18K12934
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
川本 綾 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (90711945)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 移民第二世代 / 仮放免 / 入管行政 / 母語・継承語教育 / 外国人母子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は韓国、台湾などの海外調査がコロナ感染症拡大のため非常に制限されたため、国内の外国にルーツを持つ母と子どもの権利保障および教育に焦点を絞って調査研究を行った。具体的には、昨年度に引き続き難民移住者を支援している団体にスタッフとして加わり参与観察を行った。 難民移住者の中でも在留資格のない親から産まれた子どもの場合、日本生まれ日本育ちであっても強制退去命令の対象となり、本人が日本で暮らすことを希望しても拒否されるのが現状である。定期的な入管への出頭と移動の自由の制限、就労の禁止、各種社会保険制度からの排除と、生まれながらにして生きていく上で必要な資源へのアクセスが制限された「仮放免」の子どもたちが日本に約300人はいると言われている。友人たちと同じ将来を夢見ることも許されず、強制送還に怯えながら暮らすこの子どもたちの現状からは、「子どもの権利条約」等国際的な人権規約基準から著しく乖離した入管行政と人権が保障されない日本における難民移住者の地位が浮かび上がる。 外国にルーツを持つ子どもたちにかんする研究は、母語・継承語教育、日本語教育や、遅れがちな教科学習に対する支援の重要性が少しずつ蓄積されている。しかし、日本社会で成長することすら保障されない仮放免の子どもたちとその親について当事者の立場を踏まえつつ分析した研究は管見の限りほとんどない。「仮放免」の子どもたちをめぐる課題は、日本における難民移住者の権利を子どもの権利を含め国際的な人権基準に沿うものにするのか、それとも入管法という国内法を国際条約より優先し、不透明性の高い入管行政をこのまま続けていくのかという根本的な問題にもつながると判断し、このテーマに焦点を絞って研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は韓国・台湾等東アジアの国や地域との比較研究を実施する予定にしていたが、コロナ感染症拡大の影響を受け、調査ができない状況に陥ってしまった。また国内調査に関しても、居住地である大阪で感染が拡大し、数度にわたる緊急事態宣言の中で実地調査の予定を立てるのが難しくなってしまった。一方、難民移住者の支援をする市民団体で勤務する中で、当事者が実際に抱えている問題と、当初当事者が抱えているであろうと想定していた問題意識に齟齬が生じる局面が多々あり、テーマについて多少修正を加えざるを得なかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外、国内ともに現地調査はしばらく見込めないため、勤務先を通してアクセスが可能な当事者へのインタビューや、各種文献資料を外国にルーツを持つ母子が抱える課題について、在留資格をはじめとする制度上の制約等による影響や、エスニックコミュニティ等、持てる資源の多寡によってどのような格差が生じるのかについて検討する。そして、それらがコロナ感染症の拡大などの非常事態時にどのように顕在化するのかについても分析を進める。最終的にはこれまでの研究成果について書籍にまとめ、対外発信をする予定である。
|
Causes of Carryover |
コロナ感染症拡大に伴い、国内外の調査旅行に出ることができず、旅費の支出がなかった。また、他の調査や研究発表もZOOM等のオンライン媒体を使ったものであったため、費用がかからなかった。今後も調査旅行がほぼ不可能であることが予想されるため、研究成果の発表の一環で出版予定の書籍の刊行費として使用する。
|