2018 Fiscal Year Research-status Report
20世紀における美術の制度変化の歴史社会学:市民社会と国家に着目した日英米の比較
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18K12935
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
笹島 秀晃 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (30614656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アート / 制度変化 / ネットワーク分析 / ニューヨーク / 東京 / ロンドン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、次年度以降の制度変化の比較研究をおこなう足がかりとして、次の三つの作業を行った。①アートの制度変化に関する社会学文献をレビューし、理論的な枠組みについて検討した。②アートの制度変化を実証的に研究するために、ネットワーク分析の手法を検討した。③ネットワーク分析での研究可能性を探るために、1940年から1970年までのニューヨーク市におけるアート業界の変化について事例研究を行った。 ①の理論研究に関しては、アメリカにおいて1970年代以降広まった「文化生産論」の諸研究を中心に整理を行った。特に、文化生産論の出発点になった二つの雑誌特集(1976年のAmerican Behavioral Scientistと1978年のSocial Research)の論考を整理した。その後、Harrison White、Howard Becker、Richard Peterson、Paul DiMaggioの文献を中心にレビューし応用可能な知見について検討を行った。 ②のネットワーク分析の手法については、Nick Crossleyを中心にThe University of Manchesterの研究者を中心として行われているアート業界に関するネットワーク分析のレビューを行うとともに、UCINET、R、Pajeckといった分析ソフトの操作方法を学び、本研究への活用の可能性について検討した。 ③の具体的な研究では、ニューヨーク市における1940年から1970年までのアート業界の制度変化を検討した。具体的には、ニューヨーク市で活躍した主要アーティスト40名程度の経歴データを使用したネットワーク分析の研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の鍵は、いかにして実証的にアートの制度変化を明らかにしうるか、また、実証的な研究のためにいかなるデータを用いることが可能か、の二点にあった。本年度の研究で、前者の研究手法についてはネットワーク分析を活用することで、後者に関してはアーティストの経歴データを利用することで、ある程度の研究が進められることが明らかになった。さらに、今後、アメリカだけではなく日本、イギリスと国際比較を進めていくにあたって、それぞれの国においても、ある程度類似のデータが入手できる目処が立っている。したがって、今年度目標としてた研究の基礎的地盤をかためるという構想はおおむね達成できたため、計画通りの進捗と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は日本とイギリスのアートの制度変化に関して、ネットワーク分析の手法を活用した実証的な研究を進めていく予定である。そのためには、ネットワーク分析の最新の手法を取得しつつ、それぞれの国で研究に使用可能なアーティストのデータを収集していく計画である。その際、イギリスの場合はロンドン、日本の場合は東京、それぞれの都市における主要図書館やアート関連のアーカイブを訪れ、資料収集をおこないより多様な資料を発掘できるように努める。
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