2018 Fiscal Year Research-status Report
Revitalization of communities through establishment of a new " Fukugyou system"
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18K12938
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
松本 貴文 下関市立大学, 経済学部, 准教授 (70611656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 複業体制 / 自然資源活用 / 集落再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新たな自然資源活用法を開拓し多様な生業を複合させる地域システムを形成する試み(これを「複業体制」の構築と呼ぶ)についての事例研究を通じて、こうした試みが地域社会に与える影響を解明することである。 2018年度は、自然資源活用法の具体例として再生可能エネルギーに着目し、国内外における事例についての文献調査と、再生可能エネルギー先進国としてしられるドイツ農村での事例調査を実施した。 文献調査からは、再生可能エネルギー事業が農村における新たな生業構築のための非常に重要な手段となりうることが確認できた一方で、日本におけるその普及が企業を中心として進められており、農村の生業構築という点では十分に機能しきれていないことが明らかとなった。 こうしたことを受けて、ドイツ調査では、小規模兼業農家を中心に村民の共同出資によって再生可能エネルギー事業を実施し、地域社会の発展に成功しているバイエルン州の農村を対象として、住民から再生可能エネルギー事業の開始が村の生活にどのような影響を与えたのか聞き取りをおこなった。 その結果明らかになったのは、事業が単純に雇用の拡大などにつながっているだけでなく、村内のボランティア組織の活動をより活発化させるための手段として機能しており、農家の+α所得してだけでなくコミュニティ形成にもつながっているということであった。例えば、住民の大半が何らかの形で関与しているサッカークラブや音楽隊の活動が、再生可能エネルギー事業からの利潤によって支えられ、住民がボランティアや楽しみの場として参加する活動の形成につながっていた。このように、自然資源の活用は単に所得の獲得を目的とした生業の生成だけでなく、社会構築につながりうる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とは異なるものの、海外での事例調査を実施することができた。また、文献調査についても予定していたとおり順調に進めることができた。具体的な成果報告についてはまだだが、当初から次年度以降を予定していたので重大な遅れとは考えられない。したがって、上記の通り評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは昨年度の研究成果について、学会発表・論文執筆を通して報告を行っていきたい。そこで得られた批判を、今後の研究の方向性にフィードバックさせていくことが次年度以降の第1の課題である。 次に取り組みたいのが、国内での再生可能エネルギー事業による生業創造に取り組んでいる事例の調査である。本年度は他の研究との関連で急遽海外調査を実施することとなったが、本研究の主たる関心は日本農村にあり、日本の社会制度や日本農村を取り巻く自然環境という文脈のなかでの再生可能エネルギー事業の可能性を検討したい。 また、他の自然資源の活用事例として観光にも目を向けていきたい。昨今、地方都市等おいても、インバウンドを中心に急速に観光業の拡大が起こっている。グリーンツーリズムなどに象徴されているように、観光も広義の自然資源活用と結びついており、今後の農村における新たな資源活用法として有力な手法ともなりうると考えられる。観光まちづくりについての研究も、近年活発化してきている。 他方で、観光と地域再生も、再生可能エネルギーと地域再生と同様、自然に両者が関連しあうようなものではない。したがって、観光を地域再生に接続するためには、両者を媒介する何らかの仕組みが必要なはずである。そうした仕組みについて、特に自然資源活用という観点を意識しながら研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は国内調査を実施することを念頭において、旅費を15万円と見積もっていた。しかしながら、今年度他の研究においてドイツ調査を実施することとなり、本研究のテーマとも極めて関連性の深い地域で調査を実施する機会に恵まれたため、並行して本研究の調査を当地で実施することとした。そのため、旅費を他の研究費から支出することが可能となった。ただし、現地でのコーディネートや通訳を依頼する必要が発生し、謝金やその他の経費が別途発生した。それでも旅費を支出せず済んだことから、結果として残金が発生することとなった。 次年度は、本年度実施することができなかった分、積極的に国内調査を実施する予定である。そのために次年度使用額を旅費に振り分け、翌年度の助成金と合わせて積極的に研究を推進していきたい。
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