2019 Fiscal Year Research-status Report
健常であることを願う障害者をも包摂する社会政策の探求
Project/Area Number |
18K12943
|
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石島 健太郎 帝京大学, 文学部, 講師 (70806364)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 障害 / 慢性疾患 / 健常主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の主たる研究実績としては、論文集『障害社会学という視座』への寄稿論文である。 この論文では、従来の障害学において主張されてきた健常性に対する価値づけを相対化する方法が、進行性疾患を念頭に置く場合には十分に機能しない場合がありうることを理論的に整理した。その上で、ではそうした進行性疾患の当事者が、障害学が目指すのと同様に、自己に対する否定的価値づけを回避できるとしたらそれはいかにしておこなわれるのかを調査し、能力を回復させるための伏線として日々の生活を意味づけることによって、能力が失われていくなかでも自身の状態への否定的価値づけが回避されることを示した。 また、この論文では障害学の議論に事例を位置づけたが、慢性疾患の軌跡の予期をめぐる医療社会学の文脈に置くことを目指し、英国社会学会でのポスター報告も行った。この報告の直前には、関東社会学会の助成を受けて南オーストラリア大学に短期研究滞在をおこない、現地の研究者との議論・交流を行った。 以上の成果を英語論文にまとめ投稿したものの、残念ながら採択には至らなかった。ただし、査読者からは非常に丁寧なコメントを得られたので、それらを踏まえて改稿の上で再度の投稿を目指す。 くわえて、第35回解放社会学会のシンポジウムでは、こうした障害者における能力への価値づけ、またそれを獲得・維持・回復する手段のひとつとしての手術やリハビリテーションといった広義の治療について統一的な分析視角を検討した。この議論についてはすでに論文を執筆しており、招待論文としての掲載を目指して2020年度の解放社会学会の学会誌に投稿した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、論文集への寄稿、学会の発表、論文の投稿など、本研究課題にかかわる活動を多くできた。 執筆したもののなかには出版されたもの、採択の見込みが高いものも含まれる一方、採択に至らなかったものもあった。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは採択に至らなかった英語論文について追加の調査・分析をおこない、再投稿を目指す。 ただし、昨今の新型コロナウィルスをめぐる状況から直接のフィールドワーク・インタビュー調査は難しくなっているので、基本的にはメール・WEB通話による調査をおこなう予定である。また、2020年度の日本社会学会で、色覚異常の治療をめぐる言説の研究を予定しており、こうした比較的軽度かつ多くの当事者がいる事例と、これまでに調査を行ってきた重度身体障害をともなう進行性疾患との比較もおこないたい。ただし、同じく昨今の状況から図書館の利用が難しい場合も多くなると思われるので、状況に応じて書籍の購入・電子化された資料の利用などで対応したい。
|
Causes of Carryover |
投稿した論文が不採択となり、執行予定であった英文校閲の必要が不要になったため。当該論文については再投稿を目指しており、翌年度に今年度に執行予定だった額とほぼ同額の執行が見込まれる。
|
Research Products
(3 results)