2018 Fiscal Year Research-status Report
The Development of Sociological Disability Statistics for Quantifying Social Exclusion against Disabled People
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18K12950
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
榊原 賢二郎 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助教 (90803370)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 障害種別 / 障害統計 / 障害社会学 / 社会階層 / 職業威信 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、様々な障害種別(視覚障害・聴覚障害など)がどの程度社会的排除や不利益と結びつくかについて、下記の二つの方法それぞれにおいて研究を進展させた。 (1) 主観的方法(人々の認識に基づく方法) 質問紙調査を実施し、各種障害がどの程度社会的に不利だと思われているかを調べた(実査は一般社団法人中央調査社に委託)。調査は完了し、単純集計をワーキングペーパーとして公表した。33の身体的状態について、社会的不利の程度を1から6までの選択肢で評価してもらったところ、全盲ろうに相当する状態の平均値が5.72など、感覚・身体障害が重度と評価される一方、髪の喪失(2.49)などの容貌の異形は軽度と評価された。この傾向は以前のインターネット予備調査と同様であり、尺度の安定性が示唆された。 (2) 客観的方法(実際の状態に基づく方法) 障害種別に関する情報を含む2011年アイルランド国勢調査のマイクロデータ(約1割再抽出により47万4353件)を分析した。分析結果は、World Social Science Forumおよび障害学会で報告した。前者は、就労状態の分析である。就労状態を二値化(就労しているかどうか)し、性別・年齢を統制した単純なロジットモデルでは、就労のオッズ比が聴覚障害で0.73(以下いずれも有意)であったのに対して、肢体障害で0.21、知的障害で0.36と更に顕著に就労機会が限定されており、種別間の差異が示された。後者は職種についての分析である。各種障害者が専門職や管理職、他方では単純労働にどの程度就いているかを調べたところ、視覚障害以外の障害で関連があり、専門職対単純労働のオッズ比は、知的障害で0.24、学習障害で0.40(いずれも1%有意)となり、職種面での不利が示されるとともに、視覚・聴覚障害(いずれも0.77、5%非有意)との種別による違いが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主観的研究については、委託調査の相見積もりに少々時間がかかったこと、データ納品が年度後半となったことから、単純集計の公表にとどまったが、当初2年目に予定していた客観的方法の研究も並行して進め、国際学会報告などを行なうことができた。更に、英語論文の執筆・投稿も行なえたため、調査を伴う研究課題の初年度としてはおおむね順調だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、2018年度に得られた知見を投稿論文として公表することを目指す。既に、就労機会についての客観的分析の成果は、英語論文にまとめて海外の社会学査読誌に投稿中である。主観的方法についても、今後多変量解析を行ない、成果を英語論文にまとめる予定である。 また、新たな分析を行ない、知見を広げていく。客観的方法については、雇用機会における障害とジェンダーなどの交互作用を検討し、障害学の国際セミナーで報告する予定である。加えて婚姻状態と障害の関連も分析する。主観的方法については、職業威信スコアについて行なわれた様々な分析(種別の対ごとの順序の逆転の検討、主成分分析・因子分析など)を適用する予定である。それを通じて、尺度の安定性を確認するのみならず、人々の認識の中で、細かい障害種別がいかに分類されているか(身体/精神/知的というよく知られた大分類とは異なる可能性がある)を知ることもでき、ひいてはこの社会の身体に対する感覚を知ることにもつながる。
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Causes of Carryover |
委託調査費用として、1社が直接経費満額である300万円を提示してきたが、相見積もりの結果、他社がより安価な額を提示してきたため、その差額を中心に繰越額が生じた。
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