2019 Fiscal Year Research-status Report
The Development of Sociological Disability Statistics for Quantifying Social Exclusion against Disabled People
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18K12950
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
榊原 賢二郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (90803370)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的排除 / 障害種別 / 障害統計 / 障害社会学 / 社会階層 / 職業威信 / 就労機会 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、客観的方法に属する業績として、アイルランド国勢調査個票データを分析した論文が海外英文査読誌に掲載された。アイルランド国勢調査では、視覚障害や聴覚障害、肢体障害や知的障害など、7種類の障害種別の有無を質問している。これと就労状態の関連を、ロジットモデルを用いて分析した。結果は、いずれの障害種別も就労機会における不利、即ち就労に対する非就労(失業・就労不能を含む)の増加と有意に関連していたものの、その関連の強さには著しい相違があり、聴覚障害の不利は比較的軽く、知的・肢体・心理情緒障害の不利が重度であった。 また同じデータを用いて、ジェンダーと障害の交叉性(intersectionality)について、障害種別にまで踏み込んで分析した。その研究成果を、東アジアの障害学の国際的学術集会である障害学国際フォーラムで発表した。就労機会および職業種別を従属変数とするロジットモデルに交互作用項を投入したものの、一部を除いて有意な交互作用は見られなかった。この分析においては、ジェンダーによる不利と障害種別による不利は概ね加法的であったことになる。 主観的方法に関しては、平成30年度に実施した「社会生活・家庭生活と身体についての意識調査」で得られた各種障害に関する不利の評価を分析し、学会発表した。この不利の評価に対して、回答者の性別・年齢などの基本属性は、概ね有意に影響しておらず、先行研究とは異なり、安定した測定であると考えられる。因子分析を行なうと、身体障害を中心としつつ、知的障害や記憶障害に関連する項目を含む第一因子、精神・発達障害を中心としながら痩身や疲労などを含む第二因子、容貌の異形を中心とした第三因子に分かれた。これらはそれぞれ、外界への働きかけ、内面、外面に関わるものであろうと論じた。これは人々の身体への意味付与の一端を明らかにする成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
障害統計の客観的方法に関して英語論文が掲載され、国際学会報告も行なったこと、主観的方法についても学会報告で成果が出ていることから、順調に進行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度には、平成30年度に行なった調査の論文としての公刊を目指す。既に令和元年度の学会報告で一定の分析を行なっているが、令和2年度はそこに多次元尺度構成法や確証的因子分析、順序尺度の分析手法(例: 順序ロジット)などを導入して分析を深める予定である。また、論文執筆に際しては、障害者に対して人々が感じる距離感を調べた一群の研究との関係性を明らかにする。 客観的方法に関しては、アイルランドデータを用いつつ、職業種別の多項ロジットモデルによる分析等を論文として執筆することを目指す。このデータには、管理職や専門職などの職業種別のデータと障害種別のデータが含まれており、令和元年度の国際学会で一定の分析を行なっているが、本年度はそれを論文として公刊することを目指す。
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Causes of Carryover |
初年度である平成30年度に委託調査を実施したが、当初見積を取っていた調査会社とは別の調査会社でより安価に実施できたため、その余剰金を繰り越している。2020年度は国際社会学会のISA Forum(ブラジル)に採択が決まっており、出張費用に充てようと考えていたが、コロナウイルスの流行で渡航の安全性や開催自体が見通せないため、障害統計の方法論に関わる団体調査ないしオンライン調査を実施するなど有効に活用させていただく予定である。
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