2020 Fiscal Year Research-status Report
The Development of Sociological Disability Statistics for Quantifying Social Exclusion against Disabled People
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18K12950
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
榊原 賢二郎 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 研究員 (90803370)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 障害社会学 / 障害統計 / 職業威信スコア / 社会的距離尺度 / 社会的排除 / 損傷のヒエラルヒー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、初年度に実施した「社会生活・家庭生活と身体についての意識調査」の分析を進め、国際社会学会ISA Forumで口頭報告した。また、それを基にした英語論文原稿の執筆を完了し、今後校正・投稿の予定である。 この調査は、33の身体的条件の社会的不利を1から6で評価してもらったものである(有効回答253件)。研究課題全般としては、障害者の社会的排除/不利を測定するために、(1)実態に基づく客観的方法と、(2)人々の意識に基づく主観的方法の開発を目指しており、本調査は後者に属する。 この主観的評価に基づいて、障害種別の間に2種類の「距離」を設定した。選択肢の大小の差を反映するユークリッド距離と、選択パターンの相関係数に基づくものである。多次元尺度構成法という方法で分析した結果、前者は典型的な感覚・肢体障害が重く、容貌の異形が軽く評価される一次元的構造に近くなった。これは、職業威信スコアと同様に障害種別ごとの評価の平均値を求めて得られた結果とほぼ一致した。他方後者では、容貌の異形、身体/精神の機能低下/不調がクラスターを形成しており、身体に付与されている異なる社会的意味を統計的に解明することができた。 また、この評価が、回答者の属性によって影響されるのかも分析した。調査では、性・年齢・教育背景・世帯収入などの基本属性を聞いており、これらを独立変数、評価を従属変数として回帰分析(線形・順序)を行なった。33種類中30種類は基本属性と関連しているとは言えず、本調査の評価尺度が、属性の影響をあまり受けない安定的なものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的に掲げている、障害統計の客観的方法・主観的方法の開発という観点から見ると、昨年度の客観的方法に基づく英語論文に続き、本年度は主観的方法の英語報告を行なうことができ、英語論文原稿も執筆を完了した。こうした点で、概ね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、コロナ禍の影響で、ブラジルで開催予定の国際学会がオンライン開催となったため、旅費が浮くこととなった。そこで研究期間を延長し、残額の一部を上記の英語論文原稿の校正に充てるほか、客観的方法に関する、障害とジェンダーとの交差性や職業の分析など論文化していない分析について、ネステッドロジットなどより進んだ手法を導入することなどにも残額を充てて、分析を進展させる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、当初ブラジルで開催予定であった国際社会学会の社会学フォーラムIV ISA Forum of Sociologyがオンライン開催となったため、多額の旅費が浮くこととなった。この残額は、英語論文校正費用のほか、本課題で学会発表した後論文化していない部分の更なる分析などに有効活用させていただく予定である。
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