2021 Fiscal Year Research-status Report
The Development of Sociological Disability Statistics for Quantifying Social Exclusion against Disabled People
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18K12950
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
榊原 賢二郎 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障基礎理論研究部, 室長 (90803370)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 障害統計 / 障害種別 / 社会的排除 / 社会階層 / 社会的距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度に実施した社会調査の分析に基づき、昨年度執筆した英語論文原稿に、日本の文脈に関する加筆をしつつ、英文誌への再投稿を複数回行った。当該調査は、職業威信スコアを応用して、各種身体的条件に伴う社会的不利を、人々の主観に即して測定したものである。従来、回答者が各種障害を持つ者との間に感じる距離を測定する社会的距離尺度が用いられていたが、社会的に望ましいように回答を変更するバイアスなどが指摘されていたため、障害に伴う社会的不利に関する回答者の認識を一般論として尋ねる方法を採用した。分析により、社会的不利としての障害が多様であること、社会的距離尺度と異なり属性による影響が少なく測定が安定的であること、評価の高低を捨象し相関構造に着目した際に、身体と精神、機能不全と不調、容貌等に関するクラスターが見出されることなどを明らかにした。本年は英文誌への投稿と再投稿の過程の中で、この原稿に日本の障害関連の文脈を加筆した。すなわち、雇用・福祉等各種制度で対象要件に一定の異同があるものの、障害者手帳の保有が要件の中心となっていること、近年は障害者差別解消法の制定に伴い、障害者手帳を要件としない制度も導入されていること等である。本稿で採用している方法が、障害者手帳で規定される障害の観念に縛られず、幅広く障害概念を測定しうるものであることを論じた。この論文は、本研究における障害統計の「主観的方法」の開拓に関わる部分であり、多数の障害種別に伴う社会的不利の程度を定量化する点で本研究にとって重要な意義を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究全体としては既に一本英語論文を公刊しているが、既に原稿にしている論文は公刊にこぎ着けたいところである。上記の現在投稿中の論文については、分野としては障害社会学に含めうる内容のものであるが、そうした英文雑誌が存在しないため、身体社会学・医療社会学等の英文雑誌に投稿を試みた。これらは隣接分野ではあるものの、雑誌のスコープ外であり障害専門雑誌に投稿するようにという判定であった。障害専門雑誌としては、リハビリテーションや障害学等あるが、いずれも原稿の性質にそぐわず、投稿先を模索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、障害に隣接する社会学関連雑誌への投稿を試みたが、次年度は投稿先の限定を緩め、様々な角度から関連する雑誌に当たることにより、掲載に結びつける予定である。
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Causes of Carryover |
初年度の調査委託費用で、相見積もりの結果、想定より安く実施できたため、その残額を繰り越している。次年度は、現在投稿中の論文の再校正費用のほか、因果推論や心理尺度(ワシントングループ障害質問群に関連)の書籍を購入するほか、必要に応じて統計パッケージの購入などを検討する。
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