2019 Fiscal Year Research-status Report
家族機能の外部化と社会的連帯に関する研究:1960~70年代の団地の保育施設から
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18K12952
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
本多 真隆 明星大学, 人文学部, 助教 (60782290)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近代家族 / 家族変動 / 戦後史 / 住民運動 / 社会的連帯 / 団地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1960~1970年代の団地に全国的に設立された住民の自主運営による保育施設に着目し、その設立や運営に関する実践および歴史的背景を明らかにすることで、日本における家族機能の外部化に関する社会的連帯についての基礎的視角を導出することである。近年の国内外の家族研究においては、育児や介護など、これまで家族が担うことが前提とされてきたさまざまな機能が、その外部で担われる事態に注目が集まっている。日本の社会学研究においても、こうした動向についての研究が積み重ねられてきているが、これらの研究が指摘するのは、日本における「近代家族」的な家族主義の強さである。こうした「近代家族」の規範の残存を特徴とする、日本における家族機能の外部化に関する状況を理解するためには、現代的動向の調査だけでなく、「近代家族」を超える社会的連帯がどのように実践されてきたかを歴史的な視点から内在的に明らかにすることが不可欠である。 保育施設に関する実践は、「近代家族」の重要な機能のひとつである子どもの養育を、日本におけるその典型とされている団地の家族がそれぞれの垣根を超えて分有したものであり、高度成長期における家族機能の外部化に関する社会的連帯の重要な事例として位置づけられる。そして本研究では、以下の二つの問いから、団地の保育施設に関する実践を明らかにすることを試みる。 ①1960~1970年代において形成されていた、家族への諸機能の集中とその外部化をめぐる規範や社会状況と、団地の保育施設の設立はどのように関連しているのか。 ②団地の保育施設の設立や運営は、その規範や社会状況のなかで、どのような具体的な実践を通じて、各々の家族をつなぐ社会的連帯を成立させていたのか。 本研究は以上の問いを通じて日本における家族機能の外部化についての試みの基礎的視角を導出することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、①1960~70年代において形成されていた、家族への諸機能の集中とその外部化をめぐる規範や社会状況と、団地の保育施設の設立はどのように関連しているのか、②団地の保育施設の設立や運営は、その規範や社会状況のなかで、どのような具体的な実践を通じて、各々の家族をつなぐ社会的連帯を成立させていたのか、という二つの問いをベースに、2019年度は以下二つの調査を行った。 [調査2]1960~70年代の団地において、家族への諸機能の集中とその外部化が具体的にどのように問題化され、また保育施設が機能していたかを、住民組織の発行物を通して明らかにする。[調査3]団地の保育施設の設立と運営に関わった当事者に聞き取り調査を行い、[調査1][調査2]にはあらわれない、具体的な社会的連帯の実践を明らかにする。 [調査2]では、1960~70年代の団地において、家族機能の集中とその外部化について具体的にどのような問題が生じ、また解決策として保育施設の設立がどのような役割を果たしていたかを明らかにすることを目的に、国内3カ所の団地の住民組織による刊行物の言説分析を行った。象は、①保育施設の開設を先駆的に行い、後続の施設に影響を与えた代表性を有すること、②刊行物が多く保存されていることの二点を考慮し、首都圏数カ所の団地を選定し、調査を行った。[調査3]では、[調査2]で検討した団地の保育施設をめぐる状況を踏まえ、それらの資料にはあらわれない具体的な実践を明らかにすることを目的に、上記3カ所の保育施設の設立と運営に関わっていた当事者(教職員、自治会関係者、保護者)に聞き取り調査を行った。 当初の予定では、[調査2]を2019年度、[調査3]を2020年度に予定していたが、研究対象者のご協力もあり、[調査3]も十分に進んだ。成果は論文化した。
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Strategy for Future Research Activity |
[調査2]と[調査3]を可能な限り継続しつつ、論文化など、成果の公表をすすめる。
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Causes of Carryover |
調査対象者の住居変更等で、旅費の支出が減ったため。予算は別途、物品費等(参考文献の購入)にうつし、研究の発展につなげる。
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Research Products
(5 results)