2018 Fiscal Year Research-status Report
U.S. Army's Rest Areas and Tourism Development in the Asian Countries during the Cold War
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18K12953
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
阿部 純一郎 椙山女学園大学, 文化情報学部, 准教授 (40612916)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 観光 / 米軍 / 占領 / 朝鮮戦争 / ベトナム戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下の4点である。 【1】朝鮮戦争期に米極東軍が開始したR&R計画(一定の前線任務を終えた兵士を日本に送り、数日間の休暇・娯楽を提供するもの)の成立過程を、第二次世界大戦期の米軍のレクリエーション政策、戦争の長期化と「戦争神経症」の相関性をめぐる医学言説の発展、占領直後から日米合作で整備されていく米兵観光客の受入体制という3つの観点から考察した。 【2】日本に駐留する米兵やその家族にさまざまな米国製品(日用品から化粧品、洋服、電化製品、自動車に至るまで)や日本の土産物等を販売したPX(軍専用の売店)について、第八軍購買部の文書をもとに、店舗数・従業員数、経営手法、売上実績を整理・分析した。日本本土のPX事業は、米軍が駐留した他のアジア地域(フィリピン、グアム、沖縄)では類をみない巨大ビジネスとして成長し、アメリカ本国並みの商品・サービスを取り揃えることで、長期の海外駐留生活に対する軍関係者の不平・不満を抑える役割を果たした。 【3】ベトナム戦争時に米軍のR&R計画の受入拠点とされたアジア・太平洋地域の米軍保養地(国外は日本を含めて最大10ヵ所)に注目し、この超国家的な軍の保養地システムがいかに運営されていたか、各保養地がシステム全体のなかでどんな機能を果たしていたか、米兵観光客の受け入れがホスト国の経済・社会に与えたインパクト等を分析した。 なお【1】~【3】の成果はそれぞれ学会誌で発表した。 【4】極東地域の米軍関係者を対象読者とする日刊紙『Pacific Stars and Stripes【日本・朝鮮版】』の創刊号(1945年10月3日)から米軍のベトナム撤退(73年3月)までを対象期間として、軍専用の休暇ホテル、観光ツアー、PX、レクリエーション政策、戦時休暇制度(R&R計画)に関する記事を収集し、記事タイトル等をデータベース化した(件数は約1250件)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた『Pacific Stars and Stripes【日本・朝鮮版】』の1940~70年代の関連記事の収集とデータベース化は一通り完了した。くわえて、【日本・朝鮮版】創刊以前の米軍の動向を把握すべく、2008年に復刻された同紙の【(中部)太平洋版】(1945年5月創刊~46年1月)も入手した。 米軍文書については、本年度予定していたGHQ経済科学局や極東軍・太平洋軍・南ベトナム軍事援助司令部の内部文書のほか、資料調査の過程で、国立国会図書館憲政資料室が集めた陸軍省高級副官部文書(『第二次世界大戦作戦記録』)や米陸軍戦史センター所蔵文書(『対日戦争』、『朝鮮戦争』)のなかにも第二次世界大戦~朝鮮戦争期の米軍のレクリエーション活動に関する資料が多く残されていることが判明したため併せて収集した。 ・次年度予定していた各自治体の公文書の収集作業を前倒しし、神奈川県立公文書館と奈良県立図書情報館の2館にて、日本進駐後の米軍の娯楽・余暇活動(観光ツアー、休暇ホテル、PX、R&R計画など)について記した文書を収集した。 以上収集した新聞記事や公文書類の詳細な解読は次年度の課題だが、資料収集は当初の計画を上回るペースで進んでおり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
米軍保養地の建設をめぐる米軍側の政策動向・政策意図は把握できたが、日本側の対応、地域社会・経済に与えたインパクトの解明はいまだ不十分である。そこで次年度は、米軍保養地の建設に対する地域住民の反応、行政の対応を把握すべく、軍の休暇ホテルや帰休兵の受入施設が置かれた地域(神奈川・奈良にくわえて小倉、朝霞、神戸での調査を計画)の公文書および新聞記事の収集を継続的にすすめる。 占領期日本において米軍専用のホテル・劇場・クラブ・図書館・運動競技施設を運営していた第八軍スペシャルサービス局の事業報告書が入手できたので、『Pacific Stars and Stripes』の関連記事とあわせて、米軍のレクリエーション施策の展開と軍関係者による各施設の利用動向について分析を進めたい。 以上の研究成果は学会および学会誌で発表する。
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Causes of Carryover |
<次年度使用額が生じた理由>当初はデータベース作業員として2名を雇用予定だったが、予定していた作業員の調整がつかず1名のみの雇用となったため、人件費が削減された。また、新聞資料の一部をデジタルアーカイブを活用して収集したため旅費等が削減された。 <使用計画>次年度は日本各地の公文書館・図書館での資料収集を控えているためその費用にあてる。
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Research Products
(4 results)