2020 Fiscal Year Research-status Report
U.S. Army's Rest Areas and Tourism Development in the Asian Countries during the Cold War
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18K12953
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
阿部 純一郎 椙山女学園大学, 文化情報学部, 准教授 (40612916)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 米軍 / 観光 / 除隊・復員 / 余暇・娯楽政策 / 占領 / 朝鮮戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は以下の3点である。 【1】日本占領軍の主力部隊である米太平洋陸軍(第八軍・第六軍)の報告書や米軍発行の日刊紙『Pacific Stars and Stripes』の記事をもとに、日本占領が開始された最初の半年間は、戦争終結に伴う帰国願望の高まり、復員計画の遅れや不公平性に対する不満の蔓延、占領の必要性に関する無知・無理解など、米軍内部で士気(モラール)の低下が深刻化していた時期にあたり、こうした海外駐留兵士の不平・不満を解消する手段として、兵士の余暇時間を満たす膨大なレクリエーション施策が展開されたことを明らかにした。 【2】米軍当局が兵士へのレクリエーション施策のなかでも特に力をいれたスポーツ振興について、1945年末から始まる「太平洋(陸軍)オリンピック」を事例に分析した。この競技大会の参加選手は日本・フィリピン・ハワイなどに駐屯する米軍部隊の隊員であり、各競技の開催場所もアジア太平洋各地に及んだ。これは米軍が第二次世界大戦終結直後から、アジア太平洋各地に展開する米軍基地のネットワークを利用して、海外駐留兵士が自らの駐屯先を離れて余暇・娯楽を楽しめるような、越境的な娯楽空間を作り上げていたことを意味する。以上【1】【2】の研究成果は本年度に論文執筆し、2021年度内に共著論集として刊行予定である。 【3】2019年度からの継続作業として、占領期に米軍保養地として利用された「竹島レストセンター」(愛知県蒲郡市)の写真(約250枚)について、当時を知る関係者の証言をもとに、撮影場所・撮影時期・対象人物の特定を進めた。また、スキャニングによる写真のデジタル化作業を完了させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、2019年度に延期した現地での資料収集・インタビュー調査がいまだ実施できていない。一方、これまでに入手した米軍関係文書(GHQ/SCAP、太平洋陸軍、極東軍等)の整理・分析は進展し、占領期の未公開写真のデジタル化作業も完了した。資料収集のスピードに大幅な遅れが出ているが、限られた資料のなかでも、日本占領軍(在日米軍)の余暇・娯楽政策をアジア・太平洋地域の米軍保養地との連関のなかで位置づけ評価する作業は進展した。以上を総合して「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
国内外の図書館・資料館での資料収集、関係者へのインタビュー調査は引き続き困難と予想されるため、すでに収集した資料の整理・分析、研究成果の公開作業を中心に進める。本年度は研究最終年度として、既出の論文・発表も踏まえて、第二次世界大戦から日本占領期を経て朝鮮戦争・ベトナム戦争に至るまでの日本およびアジア太平洋地域における米軍保養地の変遷とそのインパクトを評価する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた現地調査(資料収集、インタビュー調査)を断念し、参加予定だった学会・研究会もオンライン開催に移行したため、旅費支出が削減された。また、現地調査で得られた資料の整理作業員として雇用予定のアルバイトも不要になったため、人件費が削減された。以上のように、2020年度は当初から研究計画の遂行が困難と予想されたため出費を控え、補助事業期間を1年延長した。次年度使用額は、関連資料の購入費、研究成果の公開作業のために用いる計画である。
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