2022 Fiscal Year Research-status Report
U.S. Army's Rest Areas and Tourism Development in the Asian Countries during the Cold War
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18K12953
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
阿部 純一郎 椙山女学園大学, 文化情報学部, 准教授 (40612916)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 米軍 / 余暇・娯楽 / ゴルフ場 / 日米地位協定 / 思いやり予算 / 基地返還運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果は以下の3点である。 【1】在日米軍の娯楽施設のなかでもゴルフ場に注目し、国会議事録や米上院委員会の審議内容をもとに、占領終了後も残る米軍娯楽施設をめぐって、歴史上どのような批判がなされてきたか、日米両政府はその存在をいかなる論理で正当化してきたかを分析した。米軍ゴルフ場が国会で大きく取り上げられるのは1960年代後半から70年代であり、その争点は、①娯楽目的での基地提供の妥当性、②施設整備費の日本政府負担の妥当性、③利用者範囲を日本人に拡大することの妥当性の3点に整理できる。この時期に確立された正当化の論理が、その後の「思いやり予算」導入から現在までの政府答弁のベースとなっている。 【2】1960年代に「不要・遊休施設」として早期返還が求められた10カ所の米軍ゴルフ場を例に、各時代の航空写真の比較や現地調査も踏まえて、接収経緯、土地利用の変遷、返還プロセス、返還後の跡地利用について整理した。10カ所のゴルフ場のうち6ヶ所は1969~74年に集中的に返還され、工場用地や公園に転用されたほか、民間ゴルフ場として再出発を図る例もみられた。しかしこの時期以降、返還は実現しておらず、現在の国会では1960-70年代のような活発な議論は消失している。 【3】占領軍の余暇・娯楽政策に関する米第八軍司令官アイケルバーガーの見解を示した文書(ロバート・アイケルバーガー文書、国立国会図書館所蔵)を収集し、政策決定者の問題意識・政策意図を分析した。 上記【1】【2】は、論文としてまとめ公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までは占領期の資料分析が中心だったが、本年度は占領終了後から現在まで続く米軍用娯楽施設の変遷や、米軍用娯楽施設の存続をめぐる日米の見解を整理・分析し、論文化した。また占領期の米軍の娯楽政策についても、第八軍司令官アイケルバーガーの関連文書を発見し、政策決定者の意図や問題意識について具体的に把握することができた。以上の成果を踏まえて、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、米軍娯楽施設の施設整備費を日本政府が負担するという主張は、先行研究が指摘する1970年代後半より前に登場していたことが判明したため、今後はその先行例の一つであるワシントンハイツの移転問題などの事例を分析したい。また、米軍娯楽施設に対する返還運動や返還後の跡地利用など、米軍娯楽施設と地域社会との相互関係を分析する。
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Causes of Carryover |
予定していた現地調査の一部がコロナ禍の影響で実現しなかった為、残額が発生した。次年度に実施する計画である。
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Research Products
(2 results)