2020 Fiscal Year Research-status Report
Earner-carerモデルの政策評価枠組み確立に向けた指標開発と国際比較研究
| Project/Area Number |
18K12981
|
|---|
| Research Institution | Mukogawa Women's University Junior College Division |
|---|
Principal Investigator |
田中 弘美 武庫川女子大学短期大学部, 心理・人間関係学科, 講師 (50806817)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | earner-carerモデル / 稼得とケアの調和モデル / 両立支援 / 政策評価 / ジェンダー |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
現代の日本において、男女ともに稼得者でありながらケア役割（育児・介護・家事など）も遂行できることへのニーズが高まっており、喫緊の社会的課題である。本研究は、「earner-carerモデル」（男女いずれもが稼ぎ手とケアの担い手を兼任するモデル）の理論的枠組みから、関連する諸政策の妥当性および実効性を評価するための手法を検討し、エビデンスに基づく政策提言・議論の推進に寄与することを目的とする。
本研究の３年目にあたる令和２年度は、以下の３つの研究課題に取り組んだ。１）日本における政策評価の実態に関する研究、２）社会政策学における政策評価の位置づけに関する研究、３）ジェンダー視点からの政策評価に関する国際的な評価指標の整理である。いずれも文献調査を中心に進めた。１）については、2001年政策評価法の成立以降、主に各府省による目標管理型政策評価などが実施されてきた一方で課題が散見された。特にジェンダー視点の政策評価に関しては、少子化社会対策、ワークライフバランスの推進、女性活躍推進など隣接するテーマを単発的に取り扱っているのみであり、総合的な視点からの政策評価のロジックモデルに欠けることが明らかになった。２）については、社会政策学領域におけるジェンダー研究の体系的レビューの結果、いくつかの先見的な文献が政策評価やジェンダー統計の整備に言及する一方、多くの研究は労働や社会保障制度における男女格差やその前提にある性別役割分業の現状批判に留まり、評価に対する視点が弱かったことが明らかになった。３）については、グローバルジェンダーギャップ指数（世界経済フォーラム）、ジェンダー不平等指数（国連開発計画）、ジェンダー平等指数（欧州ジェンダー平等研究所）を整理した結果、ジェンダー平等指数がもっとも網羅的・包括的な指標であり、日本における政策評価の参照軸として相応しいことが明らかになった。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、予定していた諸外国における質的調査を実施できていない。そのため、令和２年度の研究としては、国内で実施できることに対象を絞り、関連文献や資料の収集を通して、主に文献研究を実施した。上記「研究実績の概要」に記した、２）社会政策学における政策評価の位置づけに関する研究については、研究計画時には副次的な課題の１つに位置づけていたが、今回の新型コロナウイルスの影響を受けて、当初予定よりも資金と時間を投入して取り組むことができた。その成果として、社会政策学における政策評価の視点の弱さ、とりわけジェンダーの視点からの政策評価は、今後より一層、注力して取り組んでいくべき学術的・政策的課題であることを明らかにすることが可能となった。
|
| Strategy for Future Research Activity |
令和３年度は、前記「研究実績の概要」１）日本における政策評価の実態に関する研究、を通して明らかになった総合的な視点からの政策評価のロジックモデルの欠如という課題について、少子化社会対策・子育て支援領域の政策評価の現状を「earner-carerモデル」の視点から分析し、より精緻なロジックモデル作成の可能性について検討する。また、可能であれば、ヨーロッパ諸国（北欧諸国や大陸ヨーロッパ諸国など）にて、政策評価研究の動向調査を実施する予定である。
|
| Causes of Carryover |
期間中に計画していた諸外国における調査が、新型コロナウイルス感染拡大の影響により実施できなかったため。今後、再び海外調査が可能な状況になれば、同様の出張計画を立てて使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)
