2018 Fiscal Year Research-status Report
民生委員を対象とした活動負担感とバーンアウトの関係の研究
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18K12983
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
中尾 竜二 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (80805052)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 民生委員 / バーンアウト |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究実績としては、研究目的である民生委員を対象とし、彼らの活動を継続していくための評価・介入策を見据え、民生委員の活動における負担感の実態を把握し、次年度に実施予定のアンケート調査の基礎となる学術研究の整理や民生委員の実態等の情報収集を多く行った。 学術研究の情報収集として、平成30年9月に開催された「社会福祉学会第66回秋季大会」に参加し、他研究者の民生委員に関する研究や量的解析手法の発表を拝聴し、民生委員研究に関して意見交換を行った。また、先行研究・文献より民生委員の負担感、困難感に関する研究・調査などを拝読しレビューを行った。これら学術研究の情報収集で民生委員の活動における負担感、継続意向研究において現時点での到達点を把握したところ、民生委員の負担感、活動困難感に関する研究はいくつか散見されたが、その先にある活動継続意向に関する研究はなく本研究の新規性や研究の方向性を検討できた点で情報収集は大変意義があった。 次に、地域での民生委員活動や活動負担感、活動継続意向についての実態を知るため、インタビュー調査を実施した。インタビューに関しては、地域において民生委員がどのような活動を実践し、その中で負担感、困難感を持っているのか、活動を継続していくためのサポートの有無等について質問を行った。その結果、民生委員の量的業務視点では、訪問業務以外にふれあいサロンへの参加、小地域の会議への参加等の活動が増加している点、民生委員の質的業務視点では、地域住民からの相談が複雑・多様化し支援に専門的知識が必要となっている実態が明らかとなった。これらの結果は、次年度行うアンケート調査の項目作成を行う上で大変意義があった。また、3地域を対象に実施したことで、地域性や民生委員を取り巻く社会資源、民生委員組織の違いが負担感や困難感、活動継続意向に関連している可能性も示唆され大きな成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度については、民生委員を対象とした活動負担感とバーンアウトの関係について、先行研究、参考文献の精査・レビューや学会等に参加し情報の収集を行うことを計画していた。学術学会での情報収集は、平成30年9月開催の「社会福祉学会第66回秋季大会」へ参加した。初年度計画での民生委員に対する情報収集については実施計画より少なかった。理由としては民生委員とのネットワークが少なかったため情報収集が行えなかったと考えられる。次年度は学会参加等で人的ネットワークを形成し多く民生委員から情報収集できるように努める。 次に、民生委員活動の実態と活動困難や負担感についてのインタビュー調査を、平成30年11月~平成31年1月で実施した。調査対象地域は、地域特性が異なる3地域を条件として山間部:A市(2名)、都市部:B市(1名)、漁村部:C市(2名)を選定した。調査対象者の民生委員の特性については、民生委員としての就任期間が1期(3年)以上の者のみ選定の基準とし実施した。調査の倫理的配慮については、川崎医療福祉大学倫理委員会の承認(承認番号18-045)を得て実施した。結果は①民生委員の実際に行っている活動について②民生委員活動で困難と感じること③民生活動で負担に感じること④民生委員活動を継続していくため考えるサポートについて質問し、各地域によって民生委員体制や地域の課題の違いにより活動継続意向や負担感の特性が異なるという実態が詳細に把握できた。研究計画では、平成30年9月~同年11月に実施予定であったが、平成30年7月の西日本豪雨で実施予定地域が被災したため、 当初予定していた時期より遅れることとなった。しかし、インタビューは初年度内に実施でき、得られたデータの文字起こしも終わり、学会発表・論文投稿に向けデータの解析を行う予定であり、おおむね計画通り実施できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、まず1点目として、初年度に実施した民生委員を対象としたインタビュー調査について、聞き取りは終了し、現在は文字起こしまで完了しているため、今後は得られたデータについて質的解析を実施して行く予定である。そのデータの結果については、社会福祉学会(令和元年9月 21日・22日開催)もしくは日本福祉教育・ボランティア学習学会(開催日程未定)にて口頭発表を行う予定である。その後、両学会または地域福祉学会へ論文投稿を行う予定である。 2点目として、初年度実施したインタビュー調査より得られたデータをもとに質問項目を選定し、アンケート調査を実施する予定である。調査対象者はD県全域の民生委員(2,000名程度)を対象とする。調査時期は、令和元年10月から12月にかけて調査票の配布を実施する。そのため、調査質問紙を次年度春期の早々に作成し、8月にはD県民生委員・児童委員協議会の事務局であるD県社会福祉協議会に対し説明・研究協力の要請・交渉を行うこととする。また、倫理的配慮に関しては、8月に開催される川崎医療福祉大学倫理委員会へ申請し、承認を受けることとする。アンケート実施後、データの集計作業を1月~3月に行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究課題を迅速・適切に遂行していくための研究環境を整備のするため、物品・文献の購入を行い、情報収集するため学会への参加を計画したが、購入物品が予定より安価に購入できたことや学術学会の参加回数が計画より少なくなってしまったことが、次年度使用額が生じた理由であると考えられる。 2019年度の使用計画としては、2018年度に実施したインタビュー結果をもとにアンケートを実施していく。2020年度は、得られたアンケート結果をもとに解析を行い、その結果を、報告書にまとめ、民生委員や地域包括支援センター等と共有していく予定である。そのため今年度同様に、より迅速に適切に研究が進めていくための環境を整備のするための物品・文献の購入を行っていく。またアンケート実施に向けD県民生委員やD県民生委員・児童委員協議会との交渉調整や情報収集のための交通費が必要である。学術学会について次年度はインタビュー調査の口頭・ポスター発表も計画しており、積極的に参加していくこととする。
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