2023 Fiscal Year Annual Research Report
An Empirical Analysis of the Impact of Minimum Wage Increases on Elderly Poverty Issues
Project/Area Number |
18K13003
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
畠中 亨 立教大学, コミュニティ福祉学部, 准教授 (70750818)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会保障 / 公的年金 / 最低賃金 / 非正規雇用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本における最低賃金の引き上げが賃金分布に変化をもたらすことで、非正規雇用を中心とした低賃金労働者層の厚生年金加入を拡大させ、年金給付に影響を与える可能性について検討を行った。また、2016年以降施行された厚生年金への短時間労働者の適用拡大についても併せて検討している。主な検討点は以下の通りである。 低賃金労働者層への直接的な影響に注目すると、最低賃金の引き上げと短時間労働者への厚生年金適用拡大が個別の年金受給額を増加させると考えられる。一方で、低賃金労働者層の厚生年金への加入拡大は、公的年金財政システムを通して年金額のスライド率等にも影響を与えることが考えられる。 公的年金財政システムを通した年金給付への影響としては、賃金スライド(標準報酬の再評価率)とマクロ経済スライドの実施期間の2点が考えられる。低賃金労働者層の厚生年金への加入が増えることで、厚生年金加入者の平均賃金(平均標準報酬額)が低下し、賃金上昇に応じて年金額をスライドさせる賃金スライド率を引き下げる効果を生むと考えられる。このことは、賃金上昇率が物価上昇率を下回った場合に、より低い賃金スライド率を新規裁定、既裁定の両方の年金に適用させる2018年以降の改正により、すべての年金受給者の実質額を低下させる効果を生むと予想される。 マクロ経済スライドの実施期間に対しては、厚生年金の適用拡大により厚生年金加入者(第2号被保険者)と国民年金加入者(第1号被保険者)の比率の変化が影響を及ぼすと考えられる。厚生年金加入者の比率が上昇することは国民年金財政を改善させ、基礎年金部分に対するマクロ経済スライド期間を短縮し、長期的には年金給付の格差を縮小する効果を生むと考えられる。
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