2019 Fiscal Year Research-status Report
在日外国人高齢者の福祉サービスアクセスの阻害要因とコミュニティの有効性の検討
Project/Area Number |
18K13010
|
Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
安 瓊伊 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 助教 (00752164)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 在日外国人高齢者 / 社会福祉サービスアクセス阻害要因 / エスニックコミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本国内に住んでいる在日外国人高齢者の社会福祉サービスへのアクセスを阻害する要因を明らかにすることと、同じ国籍と生活文化を有する人々のエスニックコミュニティによる支援の有効性について検討することを目的とする。 2019年度は、長年日本に住み続け高齢期を迎える在日外国人高齢者が増えていく中、在日外国人高齢者の中で高い割合を占めている在日韓国・朝鮮籍高齢者を対象に、なぜ生活や心身面に課題を抱えていながらその課題を解決するため社会福祉サービスや支援に繋がりにくいのかアクセス阻害要因を探ることを目的とした。 2019年4月から12月までに、在日韓国人高齢者面接調査の協力者推薦可の返信を受けた東京都の居宅介護支援事業所と地域包括支援センターに連絡をし、調査協力者との面接の日程調整を行ない、東京都の在日韓国人高齢者(家族が同席するケースもあった)19人と、その高齢者と関わっているケアマネジャーなどの専門職3人、合計22人に個別面接調査を行なった。2020年3月まで面接調査の逐語録を作成し、質的に分析を行なっている。 在日韓国人高齢者の課題を明らかにするため、研究初期のケースを分析した。ある区の在日韓国人高齢者5人の面接調査の内容を分析した結果、最も多く語られたのは、言語のバリアによる困難である。日本語の学習機会がなく、日本語の要らない環境で働いてきたため、日本語での会話も基礎的会話しかできず読み書きが出来ないことにより、情報の獲得が狭まれ、地域社会の中での付き合いも貧弱である。また、一人暮らしの上に病気によりADLが低下し、食事の支度や摂取が困難となっている。さらに、年金がないため、経済的に困難な状況に置かれている。在日韓国人高齢者は様々な課題や困難を同胞同士で助け合い支えてきたが、交流のあった同胞が帰国や死亡で減ってきて段々つながりが薄くなっていることも課題の一つである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
面接調査対象である在日韓国・朝鮮籍高齢者面接調査の協力者推薦ができる居宅介護支援事業所と地域包括支援センターの数はわずかであり、さらに面接調査対象者の承諾を得ることが難しかった。そのため、十分な人数の面接調査が実施できるまでかなりの時間がかかり、2019年12月末までに面接調査を行なった。それによって、2019年10月より進める予定であった参与観察調査に取り組むことができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半は、在日韓国・朝鮮籍高齢者とそのケアマネジャー又はサービス提供責任者への面接調査の結果を質的に分析して、在日韓国・朝鮮籍高齢者がなぜ自分たちの課題を解決するため社会福祉サービスや支援に繋がりにくいのかを明らかにする。年度後半には、在日韓国・朝鮮籍高齢者と同じ言語と文化を有する同胞が主体となって活動しているエスニックコミュニティに調査協力を依頼し、同意が得られたコミュニティの集まりや活動に参加して在日韓国・朝鮮籍高齢者への支援について観察調査と面接調査を行ない、在日韓国・朝鮮籍高齢者に対するエスニックコミュニティの支援の有効性を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
面接調査の対象者である在日韓国・朝鮮籍高齢者の協力者確保が困難であったため、2019年度前半の面接調査の進行に遅れが生じた。このことによって、2019年度後半に実施する予定であったエスニックコミュニティの観察調査を実施できなかったため、予定した研究費の一部が次年度使用となった。繰り越しされた研究費はエスニックコミュニティ調査の実施時の旅費、調査協力者の謝礼などに使用する予定である。
|