2020 Fiscal Year Research-status Report
在日外国人高齢者の福祉サービスアクセスの阻害要因とコミュニティの有効性の検討
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18K13010
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
安 瓊伊 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 助教 (00752164)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 在日韓国・朝鮮籍高齢者 / 社会福祉サービス / アクセス阻害要因 / エスニックコミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に行った面接調査(在日韓国・朝鮮籍高齢者20人と彼らに関わっているケアマネジャー5人、合計25人)の逐語録の質的分析に取り組んだ。在日韓国・朝鮮籍高齢者が最も多く語ったのは、言語のバリアによる困難である。ほとんどの対象者は1980年代以降に出稼ぎのため来日し、日本語の要らない環境で働いてきたため、日本語での基礎的会話しかできず読み書きが難しい。よって行政とのやり取りや通院など日常的に通訳が必要であり、情報の入手が限られていて、地域社会の中でも孤立気味であった。さらに、年金がなく経済的に困難な状況におかれていて、多くの対象者は生活保護受給者であった。今回の調査対象者たちは、戦前日本に渡ってきた在日韓国・朝鮮籍高齢者とは異なる状況で生きて来て、日本に来る際につなぎ役になってくれた数少ない同胞同士で支え合って来た。しかし、その同胞は帰国又は死亡により段々減ってきてつながりが薄くなっていることが明らかになった。この状況が続くと、孤独死につながりかねないと考えられ、支援の仕組み作りを急ぐ必要があると考えられる。 2020年度の研究予定は、言語のバリアのある在日韓国・朝鮮籍高齢者に対して、共通の言語と文化を有している者によるエスニックコミュニティの活動に焦点を当てた観察調査を行う計画だったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、実施できなかった。 雑誌『地域ケアリング』に、日本に長年暮らしている在日外国人高齢者の現状と生活課題を述べ、彼らが日本社会の中で孤立することなく生きられるよう、同じ言語と生活文化を有する人々のコミュニティによる支援の必要性について発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年12月末までに行なった在日韓国・朝鮮籍高齢者の面接調査の逐語録を精査し、分析に用いるセグメントを作成しながら分析を進めてきたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、遠隔授業や学生の対応に追われ、分析に取り組める時間を十分に確保できなかった。加えて個人的事情により十分に取り掛かれなかったため、面接調査研究は分析途中である。 一方、実施予定だった観察調査は調査対象者と直接会って行う調査である。しかし、新型コロナウイルス感染リスクの高い高齢者を対象に行う対面調査の危険性、新型コロナウイルス感染症の拡大による県外移動の制限等があったため、取り組むことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度には、在日韓国・朝鮮籍高齢者とそのケアマネジャー又はサービス提供責任者への面接調査の質的分析を終えて、なぜ在日韓国・朝鮮籍高齢者が抱えている課題を解決するため社会福祉サービスや支援に繋がりにくいのかを明らかにする。 また、在日韓国・朝鮮籍高齢者と同じ言語と文化を有する同胞が主体となって活動しているエスニックコミュニティに調査協力を依頼し、同意が得られたコミュニティの集まりや活動に参加して在日韓国・朝鮮籍高齢者への支援について観察調査と面接調査を行う。調査結果を分析して在日韓国・朝鮮籍高齢者に対するエスニックコミュニティの支援の有効性を検討する予定である。但し、新型コロナウイルス感染症の拡大による県外移動制限や高齢者との接触制限が続く場合、年度内に調査を終えることは難しくなる可能性がある。
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Causes of Carryover |
2020年に実施予定だったエスニックコミュニティの観察調査を新型コロナウイルス感染症による影響で実施できなかったため、予定した研究費のほとんどが2021年度に繰り越しとなった。繰り越しされた研究費はエスニックコミュニティ調査実施時の旅費、調査協力者の謝礼、面接調査の文字起こしの謝礼などに使用する予定である。
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