2022 Fiscal Year Research-status Report
在日外国人高齢者の福祉サービスアクセスの阻害要因とコミュニティの有効性の検討
Project/Area Number |
18K13010
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
安 瓊伊 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 助教 (00752164)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 在日韓国・朝鮮籍高齢者 / 生活困難 / 社会福祉サービスアクセス阻害要因 / エスニックコミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本で長く暮らしている外国人高齢者が抱えている困難や社会福祉サービスへのアクセスを阻害する要因を調べ、その支援策としてエスニックコミュニティによる活動の有効性を検討することを目的としている。2019年度に在日コリアン高齢者とその支援者(在日韓国・朝鮮籍高齢者20人と、彼らと関わっている介護支援専門員5人、合計25人)を対象に半構造化面接法を用いて個別面接調査を行った。2020年度以降計画していた、言語のバリアのある在日韓国・朝鮮籍高齢者に対して共通の言語と文化を有している者によるエスニックコミュニティの活動に焦点を当てた観察調査は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により2022年度まで実施できなかった。2020年度以降、面接調査の逐語録を用いて質的分析を行い、2020年度に一部の結果を学会にて発表した。分析の結果、在日コリアン高齢者が抱えている困難について抽出された61の定性的コードから、25の焦点的コードと6の概念的カテゴリーが得られた。また、アクセスの阻害要因として、コミュニケーション問題による情報へのアクセス困難や不十分な相談支援体制、在日コリアン高齢者の認識と地域社会との弱いネットワークが示された。そこから、ニューカマーの在日コリアン高齢者を支援するにあたって、言語の壁や心理的委縮など外国人としての側面と経済的側面を考慮しながら地域社会との脆弱なつながりを強化していく支援が必要であると示唆された。この結果を2021年度に学会にて発表し、2022年度には研究結果を論文にまとめ学術学会誌に投稿し、現在査読を受けているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19により移動や訪問の制限があり、計画していた観察調査の対象者である高齢者が集まる事業所や団体に訪問して調査を実施することは困難であったため、大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
在日コリアン高齢者に対するエスニックコミュニティの支援の有効性を検討するため、在日コリアン高齢者と同じ言語と文化を有する同胞が主体となって支援活動を行っているエスニックコミュニティに調査協力を依頼し、同意が得られたコミュニティの集まりや活動に参加して在日コリアン高齢者への支援について観察調査と面接調査を実施する予定である。高齢者関連施設や事業所は、未だに部外者の事業所や団体への長時間滞在の許可が得られない現状であり、その場合は事業所や団体の代表者と支援者のみ面接調査に変更して実施する。
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Causes of Carryover |
COVID-19により2020年度から実施予定であったエスニックコミュニティの観察調査を実施できなかった。そのため、研究費は2023年度に繰り越しとなり、エスニックコミュニティ観察調査実施時の旅費、調査協力者の謝礼、面接調査の文字起こしの謝礼、研究成果全体をまとめた報告書の作成および製本等にかかる費用に使用する予定である。
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