2018 Fiscal Year Research-status Report
日本における高齢期生活保障の形成・史的展開―雇用と社会保障の接続―
Project/Area Number |
18K13016
|
Research Institution | Matsuyama Shinonome College |
Principal Investigator |
宮地 克典 松山東雲女子大学, 人文科学部, 講師 (80814962)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 社会政策 / 高齢者雇用 / 厚生年金 / 社会保障 / 労働経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画のとおり、2018年度はとくに在職老齢年金制度の史的変遷について検証した。同制度の対象は厚生年金の被保険者である60歳以上の者であるため、主として企業で就労しながら年金を受給する高齢者などが該当する。そのような位置づけであるがゆえに、高齢期における「雇用」と「社会保障」の関係性と、両者の接合部について論じるうえで在職老齢年金制度は貴重な題材の一つとなり得る。 他方、同制度をめぐっては、高齢者の雇用を阻害しているとして、制度の改廃が長年にわたって重要な政治課題となってきた。そこで、本研究においては、以下の2点を中心に分析を行った。つまり、第1に在職老齢年金制度がどのような改正を重ねながら、1965年の創設から今日に至るまでの半世紀以上にわたって存続し続けてきたのか。第2に、厚生年金保険はそもそも仕事からの「退職」を要件―より正確には厚生年金保険の被保険者でなくなること―としていた。対して、一定所得以下の高齢就労者に限ってではあるものの、例外的に年齢を要件としたこの制度がどのような経緯を経て創設に至ったのか、の2点である。 以上を明らかにするうえで、制度の創設時やその後の法改正時の論議などについて、必要に応じて審議会や国会の議事録なども活用しながら丹念に追究していった。それらの作業を通じて、(1)在職老齢年金創設時の政策的な狙いや経緯、(2)60歳から65歳への厚生年金の支給開始年齢の引き上げが政策課題となっていくなかで、この制度がどのように変化していったのかをまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は文献調査を中心に、在職老齢年金制度についての研究を進めた。上でも触れたとおり、それは当初の研究計画に沿ったものであり、またその成果については下記のとおり研究発表として2度の報告を行うことが出来た。報告の内容はいずれも在職老齢年金制度の史的変遷を扱ったものであるが、第1の研究発表は1965年から1985年までの期間を扱ったものである。とくに制度の創設から1985年の公的年金制度の大改革と、そこでの在職老齢年金制度の改正までの史的経緯を報告した。第2の研究発表はそれ以降の制度の歩みを取り上げたものであり、60歳台前半層の所得保障の在り方が重要な政策課題となるなかで、在職老齢年金制度がどのような転換を果たしていくのかを報告した。 報告の際には、フロアーなどから貴重な質問やコメントが得られた。それに加えて、学会への積極的な参加を通じて他の研究者との情報交換の機会も得られた。これらの理由により、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度は「社会保障」の領域から「雇用」の領域への接近の過程について、在職老齢年金制度の分析を通じて研究を進めた。今後においては、以上とは逆のベクトル、つまり高齢者の「雇用」の領域から「社会保障」の領域への接近の過程を描き出していくことについて、計画している。
|
Research Products
(2 results)