2018 Fiscal Year Research-status Report
家庭の食品ロスの実態・原因の解明とロス削減のためのプログラムの開発
Project/Area Number |
18K13026
|
Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
野々村 真希 安田女子大学, 家政学部, 助教 (00803678)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 食品ロス / 過剰除去 / 消費者行動 / プログラム開発 / 調理行動 / 食料廃棄 / possibly avoidable |
Outline of Annual Research Achievements |
過剰除去(野菜等の調理の際に除去される可食部)は家庭の食品ロスの3~5割と高い割合を占める。本研究は、そのような過剰除去を削減するために、その発生要因を解明すること、また発生要因を踏まえて過剰除去削減プログラムを開発することを研究課題としている。 過剰除去の発生要因に関する研究は少なく、まずは要因の仮説を探索するところから始める必要があると考え、初年度にあたる2018年度は、質的なアプローチにより過剰除去の発生要因を解明することに取り組んだ。調査では、消費者の自宅を訪問し、調理行動の観察・インタビューを実施した。それらの観察記録、インタビューのトランスクリプトに対し、質的データ分析を行った。その結果、過剰除去の発生には、従来の関連研究で指摘されていた、消費者の可食性に関する認識や、消費者個人の好みなどの要因だけでなく、調理時の利便性を求める意識、調理の知識や技術の不足、過剰除去に対する無配慮などを含む様々な要因が関係していることが明らかとなった。この結果を基に、過剰除去削減を消費者に働きかけていく際にどのようなことを考慮すべきかを考察した。 一方で、過剰除去に関する文献を体系的に整理し、過剰除去やその類似概念である"possibly avoidable food waste"に対して、国内外の研究者がこれまでどのような問題意識を持ってきたのかを把握した。上記の調査分析結果に対して、その点からも考察を加えた。 以上の成果は国内の学会および国際シンポジウムにおいて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、過剰除去の発生要因に関する質的研究を実施することを予定していた。 消費者調査で得られた質的データが膨大であったこと、また近年過剰除去を含む食品ロスをめぐっては、特に国外で社会的・学術的に状況が急速に変化してきていることから、データの分析、および先行研究の動向を踏まえた考察にかなりの時間を要した。とはいえ、調査・分析・考察はほぼ完了し学会での成果発表も行えたことから、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度に実施した質的研究の成果をとりまとめ、国際誌へ投稿する。その後、次の(1)(2)の順に研究を進める予定である。 (1)質的研究より得られた知見を基にアンケート調査を設計し、過剰除去の発生要因に関する量的研究を実施する。その成果は学会報告・論文投稿する。 (2)過剰除去の発生要因に関する質的・量的研究で得た知見をベースに、社会心理学分野の既存研究で指摘されている環境配慮行動の規定因(「環境問題の認知」「環境配慮行動の評価」など)も考慮しながら、講義および実習からなる過剰除去削減プログラムを組み立てる。
2020年度は、組み立てたプログラムを消費者を対象に実施し、その評価、修正を通して、最終的なプログラムの提案につなげる。その成果は学会報告・論文によって公表するとともに、自治体などと連携して実際に一般市民を対象にプログラムを実施し、実社会での食品ロス削減の取り組みへ発展させたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
次年度以降の国際学会への参加旅費に使用するために、2018年度は予定していた旅費等を学内研究費より支出した。 また、2018年度に実施した過剰除去の実態と原因に関する質的研究では、調査対象者の自宅において調理行動を観察するという調査の特徴から、調査対象者を機縁法により確保することとなった。その結果、調査対象者は申請者の知人、あるいは当該年度の所属大学の職員となったが、所属大学の職員や一部の知人に関しては、申請者との関係性の近さから、所属大学のルールにより謝金の支払いが認められなかったため、その費用が発生しなかった。謝金を支払うこととなった調査対象者に関しては、謝金は学内研究費より支出し、そうすることによって、次年度以降により大規模に行う消費者調査にかかる謝金を確保することとした。
|
Research Products
(2 results)