2018 Fiscal Year Research-status Report
最新の溶液統計熱力学理論に基づく界面活性剤の洗浄力評価手法の確立
Project/Area Number |
18K13030
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
金崎 悠 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, ポストドクトラル研究員 (90804667)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 可溶化 / 自己会合 / 疎水性物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、溶液統計熱力学を用いて、洗浄現象を「汚れ」「界面活性剤」および「水」の相互作用の変化として捉え、相互作用の変化から界面活性剤の構造と洗浄力の関係を簡易に評価するための解析法を確立することである。平成30年度は、洗浄諸過程における3要素の相互作用を数値化するため、洗浄実験の前段階として、理論モデルの再構築を行った。その結果、汚れ物質の自己会合が洗浄現象に及ぼす影響について知見を得る必要が生じた。そこで、洗浄過程の一つである可溶化を例にとり、溶液統計熱力学を用いて、溶質の自己会合による可溶化への影響を概算した。 疎水性の溶質は水中で自己会合することが知られているが、溶液統計熱力学から可溶化を理解する上で、溶質の自己会合が可溶化に及ぼす影響については無視されてきた。本研究では、統計熱力学の基礎に基づき、可溶化量、溶解度および浸透圧の第2ビリアル係数といった実験データを用いて、溶質自己会合の溶解度や可溶化への寄与を見積もる方法を示した。これらの結果により、二量体を形成するなど特殊なケースを除き、疎水性物質の可溶化においては概ね溶質自己会合が無視できることを示した。 このことから、溶質の自己会合の洗浄現象への影響を十分に無視できる疎水性物質をモデル汚れとして選択することが必要であるとわかった。これらの結果をもとに、被可溶化物質や共溶媒の種類の影響についても知見を得るとともに、新たなモデル洗浄系の構築を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画発案段階では予想し得なかった溶質自己会合の影響が新たな課題として挙がったことから、その知見を使用し十分な研究成果を得るために、当初の研究計画を変更する必要が生じた。また、その調整に予想外の日数を要したため、モデル洗浄系の構築や洗浄実験を年度内に完了することが困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた結果をもとに、(1)解析手法の確立、(2)解析手法の検証、および (3)界面活性剤の評価を行う。(1)については、これまでShimizuらが報告したKirkwood-Buff積分を用いて相互作用変化を数値化する手法を用いる。(2)については、水晶振動子(QCM)法と液体クロマトグラフィ法による定量を行い、(1)で用いた理論モデルとの比較を行う。また、(3)については、(1)(2)で用いた解析手法を発展させることで、界面活性剤の構造を基軸とした洗浄力指標の構築に貢献する。
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Causes of Carryover |
前述の通り、モデル洗浄系の構築や洗浄実験を年度内に完了することが困難となったことから、実験装置の整備や洗浄実験の実施が遅れ、次年度使用額が生じた。次年度は、研究をより効率的に進めるため、研究協力者との研究打ち合わせや共同実験を頻繁に行うことを考えており、旅費として使用することを予定している。
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Research Products
(2 results)