2019 Fiscal Year Research-status Report
社会交流水準が高い地域に暮らす独居高齢者は抑うつ発症リスクが低いか
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18K13035
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Research Institution | Kansai University of Health Sciences |
Principal Investigator |
藤井 啓介 関西医療大学, 保健医療学部, 講師 (70797381)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 独居高齢者 / 一人暮らし高齢者 / 抑うつ / 心理 / 社会交流 / ソーシャルネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度は,大規模郵送調査を実施し,社会交流量と抑うつ度,その他に基本属性を収集した,結果,4613名より回答が得られ,その後,回答に欠損のあった者などを除外し,最終的には,3897名(うち,独居995名)を分析対象者とした.
軽度抑うつ状態を有する割合は独居34.6%,非独居29.7%であり,中等度抑うつ状態を有する割合は独居13.3%,非独居8.7%であった.軽度,中等度ともに独居は有意に高い割合であった.従属変数に抑うつ状態(軽度・中等度),独立変数に世帯構成,共変量は2つのモデルを設定し投入したロジスティック回帰モデルを実施した(モデル1:性,年齢,教育歴,主観的経済状況,既往歴(脳血管疾患,認知症,精神疾患),身体機能低下,認知機能低下,モデル2:モデル1+社会交流量).軽度抑うつ状態に対するオッズ比(OR)は,モデル1・2ともに独居と非独居に有意差を認めなかった.中等度抑うつ状態に対するORは,モデル1で独居は有意に高い値を示したが(OR:1.33,95%信CI:1.04-1.68),モデル2において有意性は消失し,ORは10ポイント低下した((OR:1.23,95%CI:0.97-1.58)).独居における社会交流量は,中等度抑うつ状態リスクの約3分の1(33%)を説明できることがわかった.
次いで,社会交流水準が豊富な地域に暮らす独居は,独居個人の社会交流量を調整してもなお,抑うつ割合が低いかを検討した.回答数が30以上であった35町丁(地域)に暮らす対象者のデータの限定し各地域の社会交流量の平均値を算出した.独居高齢者905名を対象に従属変数に抑うつ状態,独立変数に個人の社会交流量,地域の社会交流量を投入したマルチレベル解析を実施した結果,独居高齢者の軽度・中等度の抑うつ状態に個人の社会交流量は有意に関連するが,地域の社会交流量は有意な関連を認めなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は調査が実施できず遅れたが,平成31年度は予定通り調査が実施でき,データスクリーニングおよびデータ解析と順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
横断研究の結果,独居高齢者の抑うつに対しては,地域レベルの社会交流量は関連せずに,個人レベルの社会交流量のみが関連する可能性が示された.つまり,独居高齢者の抑うつを良好な状態に保持するには,あくまで独居高齢者個人へのアプローチが重要なのかもしれない.しかし,横断的検討に留まるために,縦断的検討は重要と考える.したがって,今後は当初の予定どおり,縦断研究の準備を進めるとともに,平成31年度に実施した横断研究のデータベースを更に吟味し,独居高齢者の抑うつと関連する因子を検討し,その結果を基にした予備的な介入研究を他フィールドでおこなうことを検討していく予定である.
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Causes of Carryover |
平成30年度に実施予定であった調査が1年遅れたことにより,平成31年度に予定していた論文投稿や学会発表に関わる費用を令和2年度に計上するため.
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Research Products
(3 results)