2018 Fiscal Year Research-status Report
地域在住高齢者のフレイル予防を目的とした栄養障害早期発見アセスメントツールの開発
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18K13042
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
本川 佳子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60782026)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域在住高齢者 / フレイル / 栄養指標 / 口腔機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
今後さらなる高齢化が見込まれる我が国では、要介護を予防するためにより早期からのアプローチが必要となり、フレイル予防の方策が広く検討されてきている。しかしFrailty Cycleの上流に位置する栄養障害への対応は重要視されているにも関わらず、栄養障害に関する概念は漠然としており、適切な支援方法についての知見は得られていない。高齢期における食生活の変化、身体栄養状態の低下等といった兆候を早期発見し適切な支援を行うことがFrailty Cycleの断切や遅速化にとって重要である。そこで本研究では、フレイル予防を目的とした高齢期における栄養障害の早期発見・早期介入のためのアセスメントツールを開発し、包括的なアプローチ法を検討することを目的に調査を行った。 1)地域在住高齢者を対象としたお達者健診(769名)およびこころとからだの健康調査(1346名)を実施した。 調査項目は①自記式質問票による評価:食品摂取多様性スコア、食欲指標(CNAQ-J: Council on Nutrition Appetite Questionnaire-Japan/シニア向け食欲調査票日本語版)、食へのアクセス、買い物の状況、外食の状況等、②食事調査:半定量食物摂取頻度調査、③身体計測:身長、体重、体組成、下腿周囲長、④血液検査:血清アルブミン値、ヘモグロビン値、総コレステロール値、ヘマトクリット値、⑤尿検査:スポット尿測定、⑥メタボリックアナライザー測定(156名) 2)地域在住高齢者の栄養障害に関するシステマティックレビューを実施した 以上1)、2)より地域在住高齢者のフレイルに関連する栄養指標は食品摂取の多様性であること、また背景因子として口腔機能(咀嚼能力)との関連が強いことが明らかとなり、アセスメントツールに盛り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①研究施設・設備・研究資料等、現在の研究環境の状況:使用する設備に関して、研究代表者が勤務する東京都健康長寿医療センターに設置されているものを使用した(足底圧分布計測システム:P-WALK、基礎代謝測定装置:メタボリックアナライザー Med Gem、体組成計BIA法Inbody等)。これまでこれら設備を用いた研究を行ってきており、計測者の養成、研究資料、研究環境については順調に進めることができた。 ②研究分担者:研究協力者については研究補助員の管理栄養士3名、図書館司書1名と行っている。また運動、口腔、心理、統計解析に関しては、専門家の意見を聞ける体制を整えた。また当初の計画に追加して、健診の尿検査の実施、結果の解釈について腎臓内科医の意見を聞ける体制を整えることが出来た。 ③本研究の研究成果を社会・国民に発信する方法等:本研究における研究成果は国内外の学術誌、学会にて発表していく予定としていたが、初年度のデータからすでに東京都健康長寿医療センターが主催する研究者ならびに一般向けの講演会などで発信を行っている。また当初の計画に追加して、栄養のみではなく多職種への普及啓発講演会においても発信を行うことが出来た。 ④地域在住高齢者への実測調査:当初の計画では1900名を対象とした調査を予定していたが、2115名を調査対象として進行することが出来た。 ⑤システマティックレビューの実施:システマティックレビューを作成した。今後も引き続き実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらなる高齢化が見込まれる我が国では、要介護を予防するためにより早期からのアプローチが必要であり、フレイル予防の方策が広く検討されてきている。その中核にある栄養障害の改善はFrailty Cycleの悪循環の断切・遅速化につながるが、適切な支援方法については明確ではない。栄養障害を早期に発見し要介護予防につなげるためのスクリーニングの開発が重要であると考え、本研究によって、地域レベルで活用でき、かつ予測感度の高い評価方法の開発を研究課題としている。平成30年度で地域在住高齢者の実測調査、システマティックレビューといった基礎資料を得ることが出来、Frailty Cycleにおける栄養障害の関連因子について、運動、口腔機能等も含め包括的に解析を行った。2年目は、1年目の結果を用いてフレイル予防のための栄養障害の早期発見アセスメントツールを作成し、検証を行う。 本研究により明らかになる地域在住高齢者における栄養障害要因(課題)とそのアセスメントツールの開発は、これら方策検討に大きく寄与する知見となる。また、自立した暮らしを実現するためのシステムの実現にあたり、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けるには、栄養状態の維持さらに適切な栄養摂取への支援が不可欠であり、今回得られる知見の重要性は大きいと考える。
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Causes of Carryover |
新たに図書館司書の資格を有する者をシステマティックレビュー実施のため雇用予定であったが、適切な人材確保が難しく、当研究所所属の非常勤研究員(図書館司書/管理栄養士)により実施した。そのため図書館司書にかかるべき人件費への支出がなかった。しかし前述の通り、高齢者の栄養ケアに関する論文は日進月歩で進んでおり、2年目以降も新たにシステマティックレビューを作成してくことが必要である。そのため、新たに図書館司書を雇用するため次年度使用額が生じた。
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