2018 Fiscal Year Research-status Report
1970~80年代の夜間中学におけるマイノリティ教育実践の歴史的研究
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18K13047
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
江口 怜 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 特任助教 (60784064)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 夜間中学 / 義務教育 / 学習権 / マイノリティ / 包摂と排除 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年にあたる2018年度は、研究を進める上での基礎となる文献の収集、調査協力者との関係構築、学会報告等を主に行った。具体的には、1970~80年代のマイノリティ教育実践に関する先行研究の調査、関連する雑誌の収集(『解放教育』等)を行い、夜間中学関係では既に収集した70~80年代の史料の整理を行い、その一部として70年代に大阪・神戸の夜間中学で学んだ障害者の就学状況に関しては日本教育学会にて報告を行った。 また、夜間中学増設運動全国交流集会(2018年8月25日・26日)や全国夜間中学校研究大会(2018年11月29日・30日)等に参加し、公立・自主夜間中学の関係者との関係構築や情報交換等を行った。また、文部科学省が設置する夜間中学設置推進・充実協議会の委員を委嘱されたことから、公立・自主夜間中学の関係者のみならず文部科学省や自治体の担当者との関係を構築できた。この点、現代の夜間中学政策に関して実質的な関わりを持ち、公教育における夜間中学の位置づけに関する課題や可能性について考察する機会ともなり、1970~80年代の教育実践分析から現代における包摂的な公教育を検討するという本研究の目的に対して大いに示唆を得ることができた。 さらに、仙台自主夜間中学の研修会実施に協力し、1980年代末から取り組みを開始した札幌遠友塾自主夜間中学の関係者への聞き取りや講演会を開催することができた。この他、松戸自主夜間中学や川口自主夜間中学の関係者とも交流し、今後の調査研究を進める基盤を構築することができた。以上のように、全体として本研究を進める上での基礎的な作業を行い、今後の研究に向けた見通しを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、基礎的な文献・史料の収集・整理や研究協力者との関係構築の面からは想定以上の成果を得ることができた。ただし、具体的な夜間中学(当初の想定は、江戸川区立小松川第二中学校、大阪市立天王寺中学校、神戸市立丸山中学校西野分校)の教育実践に関して踏み込んだ史料調査、聞き取り、実践記録の分析まで行うに至らなかったため、この点は次年度の課題として引き継がれる。以上、全体を通しては、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、具体的な夜間中学の教育実践に関する事例検討を行うために、学校訪問、史料調査、聞き取り調査等に力を入れたい。また、公立夜間中学に関しては一定の史料調査が進んでいる一方で、自主夜間中学の関係者とは関係構築を行うにとどまったため、今後は関係者を訪問して所蔵資料調査の状況を調査し、その整理を行ったうえで、今後の実践分析に向けた基盤づくりを進める必要がある。なお、史料調査・整理に関しては、全国夜間中学校研究会と密接な連携の下に進める。さらに、一定の調査が進んだ事例に関しては、日本教育学会や教育史学会等にて報告を行い、研究者間の意見交換等を進めていく予定である。
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