2019 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における文化会館整備過程:設立経緯、自治体施策、関連施設との比較調査から
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18K13049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新藤 浩伸 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (70460269)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 文化会館 / 公共ホール / 社会教育 / 生涯学習 / 劇場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、公民館、図書館、博物館等の施設に比べ施設理念が曖昧な文化会館を対象に、戦後日本の都市・地域において果たしてきた役割を歴史的に検証することにある。今後目指される持続可能型社会において、豊かな生活を創出する拠点として文化会館は可能性を持つが、その価値は必ずしも明らかではなく、財政難、自治体改革の中で存在意義が厳しく問われている。本研究では、これまで申請者が実施してきた第2次大戦終戦直後までの文化会館研究の成果を踏まえ、戦後日本の文化会館の整備過程に着目する。それにより、文化会館の施設理念を歴史的観点から明確にし、同時に「箱モノ行政」というやや一面的な評価にとどまっていた戦後日本の教育・文化政策の歴史を検証することで、今後の社会における文化会館の果たす可能性を展望する。具体的には以下の調査を行う。 【課題1 第二次大戦後の日本における文化会館の整備過程】戦後の文化会館の整備過程の概要を、資料調査から明らかにする 。 【課題2 施設建設の背景となった自治体行政施策等の検証】施設建設の背景について、各自治体の資料調査、設置に関わった自治体職員、市民、有識者、企業関係者等へのヒアリングを通じて明らかにする。 【課題3 国内外の民営も含めた関連施設の比較調査】日本の文化会館の多目的性、官民入り混じった多様な主体による設置運営という特徴は、「多目的は無目的」、施設理念の曖 昧さといった観点から批判されてきたが、そのある種の曖昧さが作り上げてきた文化的な公共性の層の厚みは、他国に比しても 独自の意味合いを有する。このことを、国内外の民間多目的文化施設の実態調査から示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連施設との比較研究を進めることができた。武道を中心とする多目的施設である日本武道館(東京都)の調査に関して、予定以上に一次資料の発掘を進めることができた。 一方で、当初予定していた各地の文化会館の訪問調査、自治体の資料調査はあまり進めることができなかった。しかし、研究協力者との打ち合わせの中で、資料をどう保存活用していくかという議論を深め、収集資料の目録作成と一部デジタル化を行うことを決めた。また、これまでの聞き取り調査に関しても内容を整理しまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、現地訪問調査がほぼ不可能になった。しかし、戦後文化会館の歴史に関して収集した資料が膨大にあるため、目録化、および古いものに関しては一部デジタル化を、最終年度においては実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度、新型コロナウイルス感染症拡大および他業務の多忙化に伴い予定していた調査ができなかった。そのため、次年度に回すこととした。
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