2019 Fiscal Year Research-status Report
戦後保育の「教育の現代化」を契機とする知的教育の総合的研究
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18K13050
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
福元 真由美 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00334459)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育の現代化 / 戦後 / 日本 / 保育史 / 雑誌『幼児と保育』 / 科学遊び / 永野重史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、保育における「教育の現代化」に関する「課題4)科学領域の理論と実践の分析」として幼稚園教育における「科学」の扱いの変容、「科学遊び」の流行とその意味の検討、「課題3)言語領域の理論と実践の分析」の基礎的な資料を収集する作業を中心に行った。 1960年代の幼稚園教育では、『幼稚園教育指導書自然編』(1961)、『幼稚園教育指導書自然編指導の実践』(1963)で、科学技術の振興という国策のため「科学技術の基礎的教養」を身につける必要が示された。これに伴い、領域「自然」は理科の教科内容の系統に組み込まれていたことが明らかになった。一方、雑誌『幼児と保育』(小学館)をはじめとする保育雑誌で、保育現場への活用が促されたのが「科学遊び」である。「科学遊び」は当初の物理的、化学的な実験遊びの内容をこえ、領域「自然」全体の内容を含むものして捉えられるようになる。「科学遊び」は科学的概念、科学的思考を幼児の発達段階に応じた教材、方法により発見、習得させるものだったが、そこで幼児の探究は重視されていなかった。この幼児の探究の不在は、①科学や学問の真正の活動に及ばないと遊びが認識された点、②幼稚園教育で科学的な態度と能力が、幼児ではなく教師に要求された点、③幼児の未熟な考え方は克服されるべきものと見なされた点に関わっていることを示した。 また、「教育の現代化」に関する議論を展開した永野重史の「科学遊び」の方法と内容の特徴を、永野が参考にしたニューヨーク市の幼稚園における科学教育を参照して検討した。永野の「科学遊び」は、ニューヨーク市の科学教育を部分的に取り入れながら、具体的な活動を通して言葉で思考する探究よりも、活動そのものによる作業に特徴づけられていたことが明らかになった。 言語の領域については、日本国語教育学会の機関紙、保育雑誌における「ことば遊び」の文献を中心に資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響で研究室、図書館等の資料、文献の調査、収集、分析を十分に行うことができない状況が生じた。計画の一部を変更することで対応することを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として以下の3点を予定している。 (1)雑誌『幼児と保育』をはじめ周辺の保育雑誌の記事を調査し、領域「言語」の保育の動向、特に「ことば遊び」について検討する。 (2)日本国語教育学会、教育科学研究会国語部会における保育研究の動向を調査・検討する。 (3)「教育の現代化」に関する数領域の保育の動向を検討するための対象を精査し、資料を調査・収集する。
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Causes of Carryover |
研究成果を発表した学会大会がいずれも東京で開催されため、交通費、宿泊費の旅費の支出がなかった。翌年度に、新しい勤務先で研究に必要なパソコン、プリンターを購入する計画である。
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