2018 Fiscal Year Research-status Report
フランス国立高等芸術学校における「わざ」の創発を通じた教育理論の解明
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18K13052
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
奥井 遼 同志社大学, 社会学部, 助教 (10636054)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | わざ / 現代サーカス / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身体を使った「わざ」の稽古場面における参与観察を行い、その習得および創造のプロセスを記述するものである。2018年度の成果は以下の三つの通りである。 (1)海外フィールド調査:申請書に記載の通り、フランス国立サーカス学校における調査を行った(2019年1月~2月)。具体的には、パリにて学校の卒業公演に立ち会うとともに、招待演出家であるAntoine Rigot氏にインタビューを行い、現代サーカスにおける「共同的創造」についての知見を得た。とくに公演のリハーサル場面に立ち会い、その一部をビデオで記録したことは大きな成果であった。 (2)学会発表および論文掲載:複数の学会で研究発表を行った。教育文化学会(2018年9月)では講演者として、日本体育・スポーツ哲学(同9月)ではシンポジウム「学校体育で育てる身体を考える」のコメンテーターとして、教育哲学会(同10月)ではランチタイム・セッション「教育哲学の境界を問う」の報告者として、日本現象学会(同11月)では国際シンポジウム「Phenomenology of Skilled Performance」のdiscussantとして、それぞれ研究発表およびディスカッションを行った。また、12月には国際シンポジウム「身心変容技法の哲学」に登壇し、フランス、ロシア、中国、日本の識者とともに研究発表を行った。以上の成果は、『身心変容技法研究』『教育文化』『体育・スポーツ哲学研究』などの学術誌に掲載された。 (3)国際共著本の執筆:現代サーカスの身体論に関する共著本の英語版『Learning from Your Body』が、原著のフランス語版に引き続き刊行された。本書は、パリ第V大学を中心とした国際的共同研究の成果の一つである。フランス現代サーカス分野の学術研究の発展のみならず、身体の哲学に関する国際的な共同研究に寄与しうる成果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、海外フィールド調査が順調に進展しているためである。報告者は、2015年度よりパリ第V大学との共同プロジェクトを進めてきた。これは、フランス国立サーカス学校(CNAC)における若い芸術家たちの実践を記述するものである。2018年度の調査により、共同プロジェクトも前進し、また、わざの創作プロセスに立ち会うことができたという点において、本研究は順調に進展しているといえる。 加えて、フランスにおける人的ネットワークが広がったため、国内でのフィールド調査を広げる可能性が出てきたことも研究の進展を支えた。フランス国立人形劇学校の卒業生の京都公演に立ち会った際、日本において活動する現代人形劇の関係者と知己を得た。フランスでの調査を日本に還元するための土壌が整えられつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きフィールド調査を進め、身体を使った「わざ」の稽古場面における事例を収集する。また、国内外の研究者とも議論を深め、事例を分析するための手法を鍛え上げていく。具体的な方策は下記の通りである。 (1)海外調査:現代芸術におけるわざの創発プロセスを明らかにするために、フランスを中心とするヨーロッパの芸術および教育実践に広く目を向け、先駆的な事例に関する資料を収集する(Festival Mondial des Theatres de Marionnettes 2019など)。 (2)国内調査:日本の伝統芸能・現代芸術との比較のために、国内における先端事例(大阪、京都、淡路島、飯田等)においてフィールド調査を行い、各地の劇場や芸術祭などを中心に、そのわざの継承・発展のプロセスを記述する。 (3)共同研究の発展:国内の学会(教育哲学会)、国際学会(International Society of East Asian Philosophy)などでラウンドテーブルやパネルに登壇し、教育哲学や現象学に関わる研究者との共同研究の成果を発表する。また、パリ第V大学との共同研究の成果として、国際共著本を編集・刊行する。
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