2020 Fiscal Year Research-status Report
フランス国立高等芸術学校における「わざ」の創発を通じた教育理論の解明
Project/Area Number |
18K13052
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
奥井 遼 同志社大学, 社会学部, 准教授 (10636054)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | わざ / 現象学的教育学 / 人形遣い / マリオネット / 現代サーカス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身体を使った「わざ」の稽古場面における参与観察を行い、その習得および創造のプロセスを記述するものである。2020年度の成果は以下の三つの通りである。 (1)フィールド調査:COVID-19のためフィールド調査の実施は制限されたが、日本における伝統芸能・現代芸術についてのパイロットスタディをいくつか実施することができた。具体的には京都や大阪を拠点とする現代人形劇の劇団の動向について調査した(2020年10月、2021年3月)。また兵庫県南あわじ市の淡路人形座に複数回訪れ、最新の動向を調べるとともに、公演に向けた稽古場面の調査を継続した(2020年12月、2021年1月、2月)。 (2)学会発表:複数の学会で研究発表を行った。日本メルロ=ポンティ・サークル第26回研究大会シンポジウム(2020年9月、オンラインにて)では招待講演として、 国際会議「Waza on the Move. L'art ineffable de l'apprentissage」(同10月、オンラインにて)では個人発表として、第17回間合い研究会(同12月、オンラインにて)では招待講演として、それぞれ研究発表およびディスカッションを行った。 (3)論文掲載・編著本の刊行:国際誌を含めた複数の学会誌への論文発表が受理された。2019年度までに行ったフランスにおけるフィールドワークの成果として得られた論考が『教育文化』(第29号)に掲載された。子どもの描画体験を現象学的に考察した論考が『発達』(165号)に掲載された。日本の伝統芸能のわざの継承事例を教育哲学の文脈で論じた成果が国際誌『Chiasmi International』に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた国内・海外フィールド調査が再開できず、新しいフィールドデータの収集が立ち遅れている。具体的には、フランス国立芸術学校(現代サーカス学校Centre national des arts du cirque、現代マリオネット学校Ecole national des hautes superieure de la marionnetteなど)およびフランス国内の芸術教育活動(パリ市内文化施設Le 104、教育施設la Maison Verteなど)における調査が遅れているためである。他方、これまでの調査を踏まえた研究成果の発表、論文投稿に関しては比較的順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに収集したフィールドの事例を分析するとともに、可能な限りフィールド調査を継続して補完的に事例を収集する。事例の分析にあたっては、適宜ウェブ会議も利用しながら国内外の研究者との議論・対話を継続する。具体的な方策は下記の通りである。 (1) 成果報告・共同研究の発展:わざの稽古場面に関する事例を分析した成果として、教育哲学および人類学の分野でそれぞれ論文を発表する予定である(いずれも国際誌投稿に向けて準備中)。また、国内の研究会や国際学会での発表の機会を活かし、教育学や哲学分野の研究者とのネットワークを広げる。また、パリ大学(Universite Paris)との共同研究の成果として、「身体哲学」に関する国際共著本をL'Harmattan社より刊行準備中である。 (2) 国内調査:補完的な調査として、日本国内における先端事例(京都市、南あわじ市、飯田市)においてもフィールド調査を継続し、劇場や芸術祭などを中心に、そのわざの習得・創造のプロセスを記述する。 (3) 海外調査:COVID-19の状況を見ながら可能な限り海外調査を敢行する。フランスを中心とするヨーロッパの芸術および教育実践に広く目を向け、現代芸術におけるわざの創発プロセスを明らかにする。具体的には、国立学校のみならず、街の子育て施設、劇場、カフェにおける事例も調査する予定である。
|
Causes of Carryover |
COVID-19により予定していた海外フィールド調査が実施できなかったためである。次年度には可能であれば実施し、困難であれば国内フィールドワークにより代替する予定である。
|