2020 Fiscal Year Research-status Report
現代米国の「複合的都市再生政策」の展開下における教育政策の位置と効果に関する研究
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18K13054
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
榎 景子 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60813300)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハーレム・チルドレンズゾーン / 教育政策 / 都市再開発 / ニューヨーク市 / 場所を基盤とした教育改革 / 教育と福祉の連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は、主に米国ニューヨーク市の事例分析に注力した。 第一に、ニューヨーク市のジェントリフィケーションとそれに伴う教育的課題について、昨年度の現地調査で収集した資料の整理・分析を進めた。解析した内容については、現在、成果をまとめているところである。 第二に、昨年度行った場所を基盤とした地域再生および教育・福祉の連携実践の草の根的な先進事例であるハーレム・チルドレンズゾーンと、それに関連する連邦政策について、ビデオ会議システムを用いてオンライン上で追加調査を行った。新型コロナウイルス感染症の流行により渡米調査は困難であったが、同プログラムを主催するNPOから情報収集を行い、NPO主催のシンポジウムにオンライン上で参加することができた。同シンポジウムには、全米各地の多様な実践家および研究者が集まっていたことで、通常の渡米調査では困難な非常に幅広い最新の資料収集が可能となった点が大きな成果である。また、同シンポジウムへの参加により、実践動向に関する最新情報を入手できただけでなく、コロナ禍での実践的な課題等についても情報を得ることができた。新型コロナウイルス流行は本研究テーマに関わる動向にも大きな変化をもたらしていることは想像に難くない。そうした情報をリアルタイムで入手できたことは次の研究にもつながる成果であるといえる。 以上、収集できた資料等については、2021年度の成果発表に向けて、現在、整理・読解・解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、ニューヨーク市の事例分析を進めることにしており、年度前半は予定通りデータ解析を進めることができたものの、解析の過程で追加調査が必要であることが明確になったことから、成果報告には至らなかった。また、新型コロナウイルス感染症の流行により、年度後半に予定していた渡航調査も断念せざるを得なかった。 一方で、昨年度に今後の研究の推進方策として計画したように、ビデオ会議システムを用いた情報収集は行うことができた。新型コロナウイルスの影響は大きく、先方との調整が難航したため、インタビュー調査は実現しなかったものの、代わりに現地のシンポジウムに参加するなどの工夫を行うことで、予定通りとはいかないまでも貴重な資料収集ができたことは成果であった。また、通常の渡航調査では難しかった全米の複数の実践家の報告を一度のシンポジウムにて聞くことができ、非常に多くの情報収集ができたことは次年度の研究を大きく進めることにつながると考える。 以上の通り、新型コロナウイルス感染症の流行が予想以上に長引いていることから、予定していた渡航調査は不可能となり、また、ビデオ会議システムを用いたインタビュー調査も実現しなかった。他方で、予定していなかった方法で臨機応変に資料収集を進めることはできた。このような点で、計画とは異なる情報収集による収穫は大きかったとはいえ、当初の予定通りに研究が進んだとはいえず、研究の進捗としてはやや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス流行の影響により、2021年度の渡航調査も見通しが立っていない。だが、今年度にビデオ会議システムの導入などオンラインでの調査環境の整備はある程度完了しており、遠隔での情報収集は可能な状態にはなっている。そのため、引き続き追加調査として必要なインタビュー等が実施できるよう先方と調整を進める。しかし、昨年度も新型コロナウイルス流行による研究者や実践現場への影響は大きく、研究協力者を探し調整すること自体が非常に困難であったことから、2021年度も同様の事態が予想される。 そのため先方との調整と並行して、第一に、現在入手出来ている資料を中心に事例分析を進めるとともに、これまでの渡航調査で入手した資料から成果としてまとめていなかったものを再度見直して研究成果につなげる。第二に、当初予定になかった周縁部分の理論分析を中心に進めていく。今年度が最終年度であるため、得られた成果をもとに学会発表および論文化を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行により、今年度予定していた渡航調査が実施できず、国内での資料収集および成果報告にかかる旅費も使用する機会がなかった。他方で、オンライン上での資料収集を進めるために、ビデオ会議システム等の導入などの環境整備を進め、また、ビデオ会議等で収集した音声データの文字起こしなどに予算を使用したものの、全体として調査は予定通り進まなかったため、2021年度に研究期間を延長し引き続き研究を進めることとした。 2021年度も新型コロナウイルス流行により渡航調査の見通しは立っていない。万が一、国外への調査が可能となった場合は予算を渡航調査に充てるが、事態が急速に改善しない限りは、理論研究を中心に進めることとする。そのため、予算は必要な書籍代や印刷費等に充てるとともに、オンライン上のインタビューの文字起こしのために使用することとする。必要に応じてインタビュイーへの謝金に充てる。また、新型コロナウイルス感染症の収束状況によって、年度後半に国内移動ができ、学会等が対面で開催されれば、成果報告のための旅費に使用する。成果報告の場が限られる場合は、報告書を作成し印刷費に充てる。
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