2019 Fiscal Year Research-status Report
不登校児童生徒を対象とする「多様な教育機会」に関する組織論的研究
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18K13062
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Research Institution | Tohoku Womens College |
Principal Investigator |
本山 敬祐 東北女子大学, 家政学部, 講師 (50737640)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フリースクール / 財政支援 / 不登校特例校 / 教員の熟達 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は(1)昨年度に続き、フリ―スクール等の運営費に関する補助事業を行う自治体を対象とした事例調査の分析を継続した。また、「多様な教育機会」に携わる教員に対する長期にわたるインタビュー調査として(2)2019年度に公立不登校特例校に異動した教員に対する聞き取り調査を開始した。 (1)について、今年度は開示請求によって入手した公文書やホームページにて公開されている事業評価書等を通じて、補助事業の立体的な理解に努めた。各地における補助事業の成果指標を比較した結果、補助団体数に加えて一部の自治体では学校復帰した児童生徒数が用いられている。多様な学習機会の充実を目標とする事業の成果を学校復帰や進学者数によって評価することの妥当性については検討の余地があるが、就学義務制度を原則としている日本において「学校かフリ―スクールか」という議論になりがちな教育機会の多様性についても同時に再考する必要がある。 (2)について、2019年4月時点で全国に12か所存在する不登校特例校のうち人事異動によって着任・転出による教員の熟達や知識移転の効果を長期的に追跡すべく、公立不登校特例校を対象に主に新任教員への聞き取りを開始した。2019年度は京都市立洛風中学校、京都市立洛友中学校、学科指導教室ASU(大和郡山市)、八王子市立高尾山学園を訪問した。調査協力者の語りからは、不登校経験の違いによる学力や体力の差への配慮が求められるだけでなく、授業の出席率の可視化を契機としてこれまでの指導方法が問い直されていた。また、生徒指導上もこれまで良かれと思って言ってきたことが裏目に出るなど、少なからず葛藤を経験している様子がうかがえた。この葛藤については授業時数に幾分ゆとりがある特例校独自の取組として、始業前や放課後の職員会議が新任教員の葛藤の解消や熟達に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
公立不登校特例校における聞き取り調査に関しては、2019年度中に各校2回ずつの訪問を予定していた。ところが、年度末の訪問に関しては新型コロナウイルスの感染拡大を考慮して延期せざるを得なかったことから、やや遅れているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
公立不登校特例校における教員の熟達過程や他校への異動に伴う知識移転の可視化が本研究の主な調査対象である。長期的な聞き取りが困難な状況ではあるが、新型コロナウイルス感染症の動向を注視しつつ、場合によっては研究期間の延長を含めて確かな知見を得るための方策を検討する。また、不登校児童生徒に対する官民の第一線組織を対象とした調査についても時期を精査して実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、2019年度末に予定していた聞き取り調査を中止せざるを得なかったため。新型コロナウイルスの流行状況を注視しつつ、研究機関の延長も選択肢に含めて効果的に予算を執行する。
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