2019 Fiscal Year Research-status Report
戦後義務教育財政システムのサブシステムとしての教職員給与制度形成過程に関する研究
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18K13065
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Research Institution | Kyoei University |
Principal Investigator |
植竹 丘 共栄大学, 教育学部, 准教授 (90635244)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育財政 / 義務教育標準法 / 中央地方関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は,「戦後義務教育財政システム」の中核的制度の一つである「教職員給与制度」がどのように成立し,なぜ「安定」したのかを明らかにすることを目的とする.そのために,公文書等一次史料に基づいた実証的調査研究を行うものである.2019年度は,国レヴェルの史料と地方レヴェルの史料双方の収集を行った.これらの史料の一部とこれまで科研費の交付を受けてきた研究の成果を用い,関連学会の学会誌に投稿論文を掲載した. この論文は,1963年の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(以下「義務教育標準法」)の改正及び翌年の義務教育費国庫負担法第二条但書の規定に基き教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令(以下「限度政令」)の改正を,地方団体がどのように受容したのかについて分析し,同時に,戦後義務教育財政システム確立期の地方教育財政運営の有り様を明らかにすることで、戦後義務教育財政システムの構造的把握を可能にするための示唆を得ることを目的とするものである. 同論文では,戦後義務教育財政システム確立期における地方団体(群馬県)の議事録の分析を通して,教育政策の主要な関心が義務教育段階から後期中等教育段階に移り,義務教育財政が県議会の場で争点にならなくなったことを指摘した.この知見は,これまでの研究の空白を埋めるとともに,「中央地方関係」という視角から戦後義務教育財政システムの「確立期」の分析を行ったものとして,戦後義務教育財政システムの構造的把握を可能にしたと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は①研究論文の執筆,②先行研究の整理,③一次史料の収集,④回顧録等の収集,とそれぞれについての整理・分析を行った.
①については【研究実績の概要】欄に記載した. ②については,被占領期の政策全般に関する先行研究,この時期の政策決定に大きな役割を果たした教育刷新委員会(審議会)に関する先行研究,この時期の財政政策に関する先行研究の網羅的な収集を行った.この他,政治学や行政学,財政学分野で行われてきた財政政策一般についても先行研究を入手し,整理を行った. ③については,国立国会図書館所蔵史料や国立公文書館所蔵史料の収集を行った.これについては,比較的に時間を取ることのできる年度末に各図書館,史料館が休館となったことから完了しておらず,2020年度も継続して行う予定である. ④については,本申請研究の対象とする政策の形成に関わった国会議員,財務省・自治省・人事院・文部省の官僚の回顧録,追悼集等を収集した.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2020年度は,2019年度までに収集した史料を,研究上の使用に耐えるよう整理すると同時に,一次史料の収集を継続する.収集した史料の整理と平行して,本申請研究が対象とする国準拠制の導入(1951),三本建給与表の導入(1953),教職調整額の導入(1971)の成立過程及び地方団体での受容を分析した論文を執筆していく.
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