2018 Fiscal Year Research-status Report
教育における対話実践の思想史的検討ーローゼンツヴァイクを起源としてー
Project/Area Number |
18K13077
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Research Institution | Musashigaoka College |
Principal Investigator |
田中 直美 武蔵丘短期大学, その他部局等, 講師 (80807008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ローゼンツヴァイク / 対話 / 教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、教育における対話実践の理論を、ローゼンツヴァイクを起源として捉え直すことで、「聞く」という観点から対話のあり方を構想し直し、教育思想史に対話のあり方についての新たな理論的・実践的なインプリケーションを示すことを目的として開始された。 当初、まずローゼンツヴァイクの教育論と翻訳論に含まれる対話思想を明らかにすることを目標としていたが、精査してみると彼の対話思想は、主著『救済の星』の「救済」概念において、すでに現われていることがわかった。このことは、単に彼の教育思想において対話を重視していたのではなく、彼の思想全体を貫く重要な概念として対話を重視していたことを示している。そのため、本研究について、イスラエルで行われた国際ローゼンツヴァイク学会で「社会的次元における「救済」の意味」(ドイツ語)というタイトルで発表した。そこでは最先端のローゼンツヴァイク研究者と意見を交換することもできた。ドイツ語の解釈についてや、ローゼンツヴァイクの「民族」の解釈についてなど、本研究の遂行にとってきわめて貴重な意見や質問を得ることができたため、今後の研究に活かしたい。 また、初年度である本年度は、日本語訳のないローゼンツヴァイクの講義録や書簡等の翻訳作業を、中央大学の村岡晋一先生とともに行った。論文集として出版する計画を進めているが、出版社の担当の方が代わったため、次年度に具体的に話を進めていくことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際学会での発表により、ローゼンツヴァイクの教育論と翻訳論に含まれる対話思想を明らかにするための予備的考察ができたこと、そして、日本語訳のないローゼンツヴァイクの講義録や書簡等の翻訳が順調に進展していることから、おおむね順調だと言える。翻訳については自由ユダヤ学院で行われた講義録やそれについて書かれた書簡で重要となるものについては、残るところ2つとなった。しかし、教育論と翻訳論に含まれる対話思想については、予備的な考察に留まっているため、次年度に行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度の成果を踏まえて以下の課題に取り組みたい。 1.ローゼンツヴァイクの教育論や講義録の翻訳を終え、論文集として出版する。 2.教育論と翻訳論にふくまれる対話思想を明らかにする。とくに彼が創設し教鞭をふるった自由ユダヤ学舎での教育実践を、当時の時代状況の分析とともに明らかにすることを計画している。 3.2の成果を学会発表ないし論文として発表する。
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Causes of Carryover |
残りの金額で購入予定の図書を購入すると、海外から取り寄せのため、次年度に繰り越してしまう可能性が高かったため、若干の金額が残っている。次年度にローゼンツヴァイク全集の一部の購入に充てる予定である。
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