2021 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化に対応する「社会に開かれた」幼児教育課程の開発的研究
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18K13078
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Research Institution | Shiga Junior College |
Principal Investigator |
李 霞 (山田霞) 滋賀短期大学, その他部局等, 准教授 (50712030)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会に開かれた教育課程 / 幼児教育 / カリキュラム・マネジメント / 地域資源 / 主体的な学び |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では、平成30年度から全面実施となった幼稚園教育要領において、とりわけ地域、社会とのつながりを問う「社会に開かれた教育課程」の推進が重視されている。新しく動き出した日本の幼児教育改革に示唆を与えるために、本研究では、アジアで関連する先進的な取り組みをいち早く進めてきたシンガポールに注目し、分析を進めた。2021年度は①シンガポールの幼児教育課程編成及び実施における「地域資源利用」の実態を追うとともに、②シンガポールにおける就学前教育改革の理想が教育現場でのカリキュラムの編成にどう反映されているのかを究明する試みをした。 その結果、研究①シンガポールの幼児教育課程編成及び実施における「地域資源利用」の実態については、シンガポールの幼児教育における「地域資源」とは、単なる地域にある物的資源・場所としての空間的資源だけではなく、人的資源や文化、イベントなども広く含まれていることが判明した。また、①政府によるサポート体制が確立されていること、②コミュニティによる協力態勢が整えられていること、③保護者は教育活動に参加し、協力する実態があること、④教育活動の計画と実施において学びの連続性を保障する視点があることが、幼児教育における「地域資源利用」を保障するポイントになっていることも究明した。研究②シンガポールの就学前教育改革の理想が教育現場のカリキュラムでの編成にどう反映されているのかについては、教育課程政策において子どもたちが学習活動の主体であるという考え方は、就学前教育現場である幼稚園のカリキュラム編成にも反映されているものの、知育重視の教育活動に加え、教師による望ましい価値の教え込みが進められるなど、現場では従来の詰め込み教育の弊害が依然として存在していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナの関係で、今年度もシンガポールへ渡航し、現地の幼稚園における教育課程の編成及びカリキュラム・マネジメントの実態に関するフィールド調査が実現できなかった。 また、日本でも、コロナの影響であらゆる活動が制限され、附属幼稚園における幼児教育課程の開発のための実践研究もほとんど進められなかった。 こうした状況のもと、今年度は主にこれまで集めてきた研究資料やデータの整理を踏まえて研究を続け、その成果を「シンガポールの幼児教育課程編成における『地域資源利用』の構想と実際」(京都大学『地域連携教育研究』第7号pp.39-51)、及び「シンガポール就学前教育改革の現状と課題についての考察―教育課程政策の理想と幼稚園でのカリキュラム編成の実際に注目して―」(『滋賀短期大学研究紀要第47号』pp.57-70)」と題した論文にまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、附属幼稚園や守山市の公立幼稚園にて、幼児教育課程の開発のための実践研究を進めていく。また、シンガポールにおける就学前教育改革についての最新動向に注目しつつ、必要に応じて現地の就学前教育機関に対する調査を追加で実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの関係で、予定していたシンガポールでの現地調査及び附属幼稚園における幼児教育課程の開発のための実践研究ができなかったため。 2022年度は、可能な限り、これらの調査・研究を継続し、成果を発信していく。
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Research Products
(3 results)