2020 Fiscal Year Annual Research Report
Educational administration research on Federal Law of Education in Russia
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18K13079
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Research Institution | Hiroshima Bunka Gakuen Two-Year College |
Principal Investigator |
黒木 貴人 広島文化学園短期大学, その他部局等, 准教授 (60736106)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ロシア連邦教育法 / 公益性 / 新自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに収集したロシア連邦教育法に関する資料・文献をもとに,、ロシア連邦教育政策の特徴や課題に関して分析・考察を行った。その成果は主に、『現代ロシアの教育改革 伝統と革新の<光>を求めて』(ロシア・ソビエト教育研究会・嶺井明子他編、東信堂、2021年)の第2章「新しい時代の教育ガバナンス―ロシア連邦教育法に見る教育制度・教育行政」に示すことができた。その要点は以下の2点である。 第1に、ロシア連邦の教育政策は中央集権的な政策展開及びそれを反映した法規定に基づき、国民の「教育への権利」の保障と国家としての「公益性」の保障を志向している。ロシア連邦教育法においては、教育を提供する側(連邦中央・地方政府・教育機関・教師)などに学習者の教育にかかる「義務」や「責任」を課すと同時に、学習者及びその保護者に対しても法規に定められる学習の確実な履行を「義務」「責任」として求めている。とりわけ学習者に対する義務的規定は2011年のロシア連邦教育法において始めて規定されたものであり、近年のロシア連邦の教育政策の方向性を特徴づけるものとなっている。 第2に、世界各国の新自由主義的な教育政策のトレンドとの符合である。学習者がどのような学習成果を生み出したのかを「義務」や「責任」として求め可視化することは、まさに新自由主義的な教育政策の特徴と言える。ロシア連邦教育法においてもそのような傾向が看て取ることができ、その様相を規定分析により明らかにした。一方で、新自由主義的な教育政策、その帰結としての教育格差の拡大に対する批判はロシア国内においても少なくなく、2011年ロシア連邦教育法の政策過程においても議論となっていた。ロシア連邦教育法においては、地方の有力者による主張も受ける形で農村部等の小規模教育機関に対する一定の財政保障が新たに規定されており、新自由主義に抗う興味深い点として指摘できる。
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