2020 Fiscal Year Research-status Report
戦時下日本の高等教育機関における「文化交流」の教育的機能に関する基礎的研究
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18K13081
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Research Institution | Chikushi Jogakuen University |
Principal Investigator |
山本 尚史 筑紫女学園大学, 人間科学部, 講師 (90767542)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化交流 / 文化事業 / 文部省 / 帝国大学 / 思想問題 / 日本文化講義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度については昨年度末よりも新型コロナ感染症の影響を受け、これまで調査を受け入れてもらっていた、大学アーカイブズ、自治体の図書館などの受け入れが停止されたこともあり、史料の収集面で大幅な制約が生じた。その反面、オンライン、史料の沿革複写等を活用して、情報収集、研究者との意見交換を活発に行うことができた。 具体的には、戦前の大学、高等学校等で学生生徒に推薦された活動(正課、課外を含む)の中で、「日本文化講義」「特別講義」などの基礎資料、先行研究の整理を行うことが出来た。その中で講義担当者の学問領域、何を専門的な知見として世の中に公開しているかなど、戦時下の研究者がどのように戦時下の研究・教育の普及活動に取り組んできたのかの一端を知ることができた。それはその当時に期待された「文化」の姿であり、戦時下に国家が大学高等学校等に期待した教育研究活動の在りようであった。 また、大学、高等学校において刊行された「○○○○大学一覧」、同窓会名簿、校友会雑誌等を活用して、各大学学校での人的なつながり、他大学学校間での関連性などについても史料の分析を始めることができた。 これらの、今年度の作業・成果については、これまでの研究史においても、幾分か知られているところであり、各大学学校の年史編纂で得られた成果はそれぞれが独立した内容のものであるため、大学学校間を比較することや並列して得られる情報の分析などには取り組まれてこなかった。このことを申請者が取り組むことによって、大学史、高等教育史における「文化交流」でどのようなものが、対象とされたのか、期待されたのか、という基礎情報を取りまとめることにつながった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響により、勤務校から出張の許可が下りず、調査を受け入れていただいた機関の利用ができなくなった。オンラインで一部対応していただいたが、利用史料が個人情報を多く含みものであるため、限界があり、予定の手順で作業ができていない。 ただし、先にも書いたが、基礎資料や先行研究で検討されてきた対象の再度の掘り起こし・検討は行うことができたため、研究の基礎基盤を補うことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もコロナ禍での移動は相当に制限されると予想している。また最終年度のため、調査等の予定は維持しつつも、これまでに収集した史料、検討した先行研究等から得られた知見を論文にし、成果の公開に集中したい。現在論文を2本執筆中であるため、学会誌に掲載できるレベルまでブラッシュアップして、投稿を行いたい。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍の影響を受け、予定していた学術集会への参加ができないこと、史料調査を実施できなかったため、配分予算のほんの一部しか使用できなかった。 2021年度は、論文執筆の過程で基礎資料として国会図書館等での遠隔複写を、雑誌記事をベースに行う予定である。目録に記載されていない部分の確認も行うため、複写頁数が多くなることが予想される。そのため、2020年度分と2021年度分を合わせて、執行したい。 また、一部は学術集会等での発表旅費、出張可能になった際に史料調査費として充当したい。
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