2019 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における外国人学校の公的保障に関する史的研究ー行政主体の輻輳性に着目して
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18K13083
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Research Institution | Kyoto Human Rights Research Institute |
Principal Investigator |
呉 永鎬 公益財団法人世界人権問題研究センター, その他部局等, 専任研究員 (00781163)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 外国人学校 / 各種学校 / 朝鮮学校 / 公的保障 / 教育の公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な外国人学校に対する公的保障のあり方、その歴史を比較検討するために、前年度に引き続き先行研究の情報整理、公文書の探索、聞き取り調査を行った。 府県知事が認可権を持つ私立各種学校の認可に関し、文部省や外務省が府県に意見することは基本的に確認できない。しかし多くの研究が明らかにしているように、朝鮮学校に対し、文部省は積極的に介入し、抑圧政策をうっている。また1956年11月、外務省は横浜山手中華学校の認可に関し、「本件が国府との関係では好ましいことではないが、国内法の規程に準拠し、合法的に認可を申請したものに対し、外務省として不許可しかるべしとの意見は述べ難い」とする一方、認可の是非を伺いに来た神奈川県知事に対し、「法規上は、両省〔外務省および文部省〕ともこれを禁止する規定もなく、困難であるが、県が決定権を持っているのだから、むしろ県の裁量で何とか防げないか」と提言していることが確認できる。 外国人学校の認可は、当該教育機関の当事者にとっては経済的負担の軽減、社会的地位の向上等、教育的にも積極的な意味を有したが、上記外務省の提言から読み取れるように、極めて政治的な営為でもあった。そこに通底している一つは、冷戦の論理である。 その駆動のあり方や範囲について、地域ごとにどれほどの異同があるのか、引き続き調査していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スノーボウル形式で、聞き取り調査は計画以上に実施できている。しかし50~60年代当時の関係者には高齢者も多く、引き続き迅速に調査を行わなければならない。 公文書に関しては、各外国人学校の認可権を有する府県においても、認可時の経緯を示す公文書を保存していない、あるいは廃棄はしていないものの探すことができない状態にある場合が少なくなかった。兵庫県については関連する文書を開示請求することができたが、まったく経緯を確認できない県もある。本研究は当事者たちの声や記録とともに、公文書を積極的に活用する研究でもある。今後別のアプローチを検討していく。 一方、COVID-19の感染拡大に伴い、国会図書館や公立図書館、公文書館等が軒並み休館となっており、さらに高齢者の聞き取り調査も実施が難しい。この事態が継続することを見越して研究方法の練り直しが求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
①聞き取り調査について、対面での調査が難しい場合、オンラインでの実施を検討する。ただし高齢者の場合、十分な調査が行えない可能性もある。年度後半に積極的に実施していきたい。 ②COVID-19感染拡大防止のため公文書館や国会・公立図書館が休館となっており、当該施設での資料調査が難しい現状である。開館を待つほかない。 ③上記のような状況であるため、2020年度前半に新たな資料を発見するための調査を実施するのは難しい。関連する文献を渉猟し、本研究の持つ理論的射程・深さを錬磨することに努めたい。調査は後半に集中的に実施する。
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