2020 Fiscal Year Research-status Report
高専教育モデルの海外展開基盤の現状と展開実態に関する研究―タイにおける展開事例―
Project/Area Number |
18K13089
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Research Institution | Hiroshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
下田 旭美 広島商船高等専門学校, その他部局等, 講師 (80812784)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高専 / 比較教育 / 技術教育 / タイ / 教育借用 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画の3年目に当たる2020年度は、タイへの高専教育モデル導入3年目となるテクニカルカレッジ2校(チョンブリ、スラナリ)ならびに高専教育モデル導入を支援する教育省職業教育局を訪問し、聞き取り調査や文献・資料収集を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大の影響からタイ渡航を断念せざるえない状況となった。現地の研究協力者の支援を受けながらの情報収集を試みたが、休校、オンライン授業への切り替えなど、代替案の実施も困難であった。そこで、本研究課題の目的に照らして、海外移植の際に先鋭化する高専教育のアイデンティティを探るべく、海外の職業教育機関と高専を比較分析し「海外から見た高専の特徴―予備的比較分析―」『広島商船高等専門学校紀要』第43号所収としてまとめた。併せて、教育借用に関する先行研究の検討と教育モデル受容のプロセスの中での摩擦や衝突についての理論枠組み、分析項目の設定を進めた。その結果は、2021年7月にオンラインで開催される第11回世界教育学会(WERA:World Education Research Association)で発表予定である(採択済)。さらに、高専教育モデルを導入している上記テクニカルカレッジ2校の基礎情報の更新のため、各校、関係組織などのウェブサイトを通して情報収集を継続し、タイ高専の現状把握を進めた。その結果は、2021年12月に開催される第14回国際タイ学会(ICTS:International Conference on Thai Studies)で発表予定である(採択済)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、当該年度7月に予定していた第11回世界教育学会(スペイン)での発表は延期となり、また8月に予定していたタイでの現地調査は断念せざるを得なかった。第11回世界教育学会で発表予定であった教育借用に関する先行研究については、本年度7月にオンラインでの開催となったため、先行研究の検討を踏まえた理論枠組み、分析項目に、タイの高専教育モデルの展開を事例として分析・考察を行った。現地調査については、上述の通り代替案を検討したが、実施が困難だったため、最新文献、各校、関係組織などのウェブサイトから情報を収集し、タイ高専の導入過程をまとめた。その結果は、第14回国際タイ学会で発表する。 現地調査や学会発表が延期となったため、本研究課題の目的に照らして、海外移植の際に先鋭化する高専教育のアイデンティティを探るべく、高専教育モデルの制度研究に着手した。同研究は、海外に展開を進めている高専教育モデルをドイツ、イギリス、フランスの職業教育制度と比較し、海外から見た高専の特徴を解明することを目的にし、第一弾として「海外から見た高専の特徴―予備的比較分析―」としてまとめた。分析結果からは、職業教育は日本並びに比較対象国でも前期中等教育後(15~16歳)から開始されていること。職業教育分野において高等教育段階への進学が進んでいること。職業教育学校では専門科目とともに一般科目からなる教育課程を実施していることが類似点と確認できた。一方で、工業化に特化した5年間の一貫したカリキュラムや、教員の学歴資格水準については高専教育制度の独自性が見られた。2021年度には、アジア地域の国々の職業教育制度と高専教育制度の比較分析を行い、高専教育制度の特質解明を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、タイ高専教育モデルの導入の4年目にあたる。高専の高学年となった4年生のカリキュラム、教員の準備状況、卒業研究、卒業後の進路の検討など現状把握を可能な限り進める。一方で、2021年度も新型コロナウイルスの影響が色濃く残る可能性高く、現地調査については、現地研究協力者と相談し、状況を見極めながら、新たな調査データが取得できるように、Web会議やアンケート調査などの可能性を検討する。と同時に、高専教育モデルに関する調査研究、成果発表を進める。具体的には、第11回世界教育学会で発表を予定している教育借用の分析枠組を用いたタイ高専の事例研究は、発表後速やかに国際学術誌に投稿する。また、2020年度にまとめた「海外から見た高専の特徴―予備的比較分析―」の第2弾であるアジア地域の国々との比較分析を行い、第1弾の結果との比較考察を含め、より広い視座からまとめる。この他、2020年度後半から『高専学会誌』全100巻(1996~2020年刊行)の内容分析を進めている。同学会誌の目次分析から暫定的なカテゴリーを設定し、それらカテゴリーの中から高専制度や在り方に関する特集や論文などを抽出している。抽出した論文等の内容分析を行い、これまでの高専研究の傾向や、分析から見えてくる高専の特徴、今後の在り方などをまとめる。この結果は、9月に実施予定である高専学会での口頭発表を予定している。発表後は、速やかに同学会誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当初予定していた国際学会での研究発表、タイ現地調査が延期となった。そのため、教育借用論や高専教育制度についての文献研究を進めた。これに伴い文献研究に必要となる文献(和洋書籍、和洋学術誌)や、やウェブサイトでの情報収集に必要な物品の購入に予算を執行したが、結果的には次年度使用額が生じることとなった。 次年度使用額については、新型コロナウイルスの感染の収束後、国際学会参加及び現地調査の実施予算として組み込み適切に使用する予定である。一方で、現地調査の実施が困難となった場合には、現地研究協力者と連携を取りながら遠隔調査実施を検討する。これに必要な関係者・協力者への謝金等の予算として組み込み適切に使用する予定である。この他、研究課題関連図書費、質問紙調査の実施費、調査対象国からの研究課題関連資料の取り寄せにかかる費用、国際学術誌への投稿論文の英文校閲費として使用することを計画している。
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