2021 Fiscal Year Research-status Report
イタリア公立学校の多様性教育支援と複合的プロジェクト型パートナーシップの調査研究
Project/Area Number |
18K13092
|
Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
高橋 春菜 盛岡大学, 文学部, 助教 (80781418)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 理念 / 教育の貧困 / 文化間教育 / 特別ニーズ / 地域性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も新型コロナウィルス感染症等の蔓延ないし感染拡大防止の観点から海外渡航の制限が続いたことから、現地調査を実施できなかった。本来ならば、調査方法をウェブに切り替え当初計画の一部でも進める予定であったが、現地の行動規制は緩和したものの当事者らの職務と生活における不安定な状況は続いており、外部からの調査要求に応じる余裕は欠いていることから、とりわけ新規のインフォーマントを得ることは、未だに困難な段階であると判断した。 そこで本年度は、具体的には、イタリア(及びEU)における「特別教育ニーズ」の枠組みのうち、「社会経済的、言語的、文化的な特別ニーズ」に限定し、主に文献を通じて、貧困や文化的背景による排除や困難に関する理念上の構造的問題を検討した。また現代のそうした教育課題に対応する際に頻繁に引き合いに出されるイタリア戦後教育改革の実践と理念を洗い直し、当時の社会背景に規定された限定性を踏まえつつ輪郭を引き直すことを試みた。 日本のイタリア教育研究者2名を交えた情報共有と検討の場を得たほか(本年度中計9回)、イタリア言語・文化研究会(早稲田大学イタリア研究所)、日伊協会、立命館大学国際言語文化研究所の研究会において他分野の知見を得た。特にイタリア戦後美術における「イタリア性」の検討の枠組みは当時の教育実践の分析に援用しうる部分が多くみられ、イタリア新教育の輪郭を整理するうえで有益であるように思われた。これらの地域性に関する分野横断的な情報収集と検討は、本課題のみならず他のあらゆる個別事例の分析基盤として中長期的に取り組みたい。 また本研究課題に関連する内容で、ボローニャ大学より、同大学の教育学研究者らと国内の研究者らを交えた出版計画が提案され、年度内に出版予定であったが諸事情により出版時期が延期された。この連携体制は今後も活かしていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上述の通り、現地調査に加え、学校現場の実践者らへの聞き取りも困難であったため、学校現場の実態を知るためのフィールドワークは実施できなかった。現状に関する周辺的な情報収集は継続したものの、支援と教育の関係を検討するという当初の研究計画に見合う成果は得られていない。歴史的、理念的な文脈に視点を移し替え、新たな知見を蓄積し始めることができたことは有意義であったものの、当初の計画の大枠に照らせば遅れていると言わざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症の事態の収束をみて、ぜひ、現地の実践者らに対する聞取りを実施したい。その際には、必ずしも本研究計画の当初の問いにこだわらず、場合によっては緊急事態下での工夫や問題などに積極的に焦点を当てつつ現状把握に努めたい。そのうえで、感染症危機以前の実態の再構成にも取り組み、全体的な検討を行う必要があると考えている。 ただし最も困難と思われるのは、本研究課題の柱の一つでもある「パートナーシップ」の解明である。複雑な網の目を解明するために遠隔でのツールに依拠することは、かえって混乱を招くことが懸念される。この点については、本研究課題中で追及可能か否かを慎重に判断したい。 かわって本研究課題の中核をなす「多様性教育支援」の実践例については既に蓄積してきた知見が手元にあることから、これらの翻訳や公表に務めることも社会貢献につながるものと考えている。その際、社会的な要請に応じるための補足的な情報収集にも務めたい。あらためて国内の関連事情に目を向けること、イタリア現地との国際連携の強化及びウェブを活用した他地域との連携も模索したい。
|
Causes of Carryover |
一切の海外調査が実施できなかったため。
|