2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research study on diversity education support and multiple project-based partnerships in Italian public schools.
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18K13092
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
高橋 春菜 盛岡大学, 文学部, 准教授 (80781418)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | impertality / 文化間対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
現地渡航を断念せざるを得ないと判断し、多様性教育支援の理論的検討に研究の焦点及び方法を切り替えた。その検討を踏まえ2022年の日本比較教育学会では、欧州評議会(EU理事会)の『文化間対話に関する白書』(2008)において、EUの統合理念「人権、民主主義、法の支配」という「共通の目的意識」への構成員の統合を実現するための理念構造上の鍵となっているimpartial(ity)[中立・公平(性)]概念が、かえって〈文化〉を損ない、対話をさえ骨抜きにしかねない懸念を問題提起した。 欧州評議会による先の白書において文化間対話の中核をなすのは、民主主義や人権といった普遍的価値と、こうした普遍的価値に接続するために構成員を来歴や帰属から自由な存在として捉え返す自由主義である。同白書は、共同体主義が擁護してきた多文化主義との明確な区別を前面に押し出してもいる。こうした欧州の自由主義に基づく統合理念は、移民の第二世代が6割を超えるイタリアにおいても、新たな文化的アイデンティティの形成ないし、その社会統合にとって重要な意義をもちうる。ただしこれを一義的に推し進めれば、文化の尊重のもとづく対話そのものを骨抜きにしてしまいかねないことに留意が必要である。 また、イタリアにおいては、1990年代以降の移民子弟の急増を受け、欧州の動向を踏まえた文化間教育の理念を採用したが、具体的には、文化間仲介者による介入、移民文学等の文化資源生成、そのもとでの教育実践を通じて、移民背景を持つ子どもたちの周囲はもとより、当事者らも自らの経験や来歴を理解するための場が積極的に設けられていたこと、そうして異なる文化的背景の理解にもとづく対話を促進する風土の形成が試みられていたことは無視できない。
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Research Products
(4 results)