2018 Fiscal Year Research-status Report
統計・数理モデルによる教育達成格差メカニズムの総合的解明
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18K13096
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
濱本 真一 立教大学, 社会情報教育研究センター, 助教 (10782245)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教育社会学 / 数理モデル / シミュレーション / 社会階層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、出身家庭背景による教育の機会不平等発生のメカニズムを解明し、教育制度による不平等の解消可能性を検証することである。出身家庭背景が子供の教育達成に大きく影響しているだけでなく、教育機会の格差が「なぜ生じるのか」という問いに対して理論的な説明を与えるため本研究は、統計的手法、数理モデル、社会シミュレーションという3つのアプローチを用いて、不平等発生のメカニズムを突き止める。 1年目は計量分析を中心に行い、とくに高等学校段階の学科によってその後の地位達成にどのような影響を及ぼすのかを中心に検討した。高校と企業の実績関係が希薄になった今日においても、キャリア初期時点において高校職業科によるセーフティネット機能が存在することを示した。 さらに、本研究が階層分化のスタート地点として強調する中学校段階の分析も開始し、基礎的な分析によって、国私立中学校進学という現象が近年になって都市部の減少だけではなく地方でも盛んになり始めていること、さらに国私立中学校進学に対する階層差構造には地域による違いがみられないことがわかった。 並行して、既存の研究が示してきた不平等生成メカニズムを統合し、検証可能な数理モデルを作成した。教育選択の階層差を説明している理論として有力視されている「相対リスク回避説」の数理モデルをさらに発展させ、教育制度(具体的には社会における教育機関の収容力)と階層差の関連を記述するモデルを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が主眼とする教育制度による階層間格差生成メカニズムのうち、本年度に示せたものは社会における教育機関への収容力要因に関して整理、定式化した。一方で計量分析においては中学校段階、高校段階の2つの段階に関する質的な差異を明らかにすることができた。 以上より、研究計画に沿って概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に作成した数理モデルをさらに発展させ、教育に関わる様々な事項を表現できるモデルを作成する。そのためにはまず、国内外の教育制度を整理し、格差生成と深く関係する要素を抽出していくことが必要となる。そのため、国際比較可能な大規模調査データを用いて、教育機会・達成の不平等のパターンを示すことを課題とする。
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Causes of Carryover |
申請の段階で参加予定の学会について開催地が未定であったため、平均的な移動旅費を計上していたが、本年度の学会開催は比較的本務校から近い場所が多く、旅費を必要としなかった。本年度十分に行えなかった教育制度に関する資料収集費として使用する予定である。
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