2018 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Quality Assurance of Higher Education in the Arab States: Nation, University and Market
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18K13099
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
中島 悠介 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (60780939)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高等教育 / 質保証 / アラブ / エジプト / アラブ首長国連邦 / 国際化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアラブ諸国における高等教育質保証の様相を明らかにすることを目的とし、平成30年度は主に国家に近い位置づけにある質保証機関の役割と機能を検討した。まず、エジプトでは2007年、国家教育質保証・適格認定機構(NAQAAE)が積極的な高等教育機関への質保証を開始した。その主な役割として、質保証を通し、多様な枠組みのもとで展開する高等教育機関の質の統合を進めようとすることが明らかとなった。一方、その課題として、適格認定が専門分野別評価に大きく偏っていること、その原因として、1機関の規模が大きすぎるために機関全体の評価が困難であること、また、公立大学の入学定員が中央集権的に決定されるために質保証を受けることが学生募集のメリットとして機能せず、機関へのインセンティブが大きくないとみなされていることがわかった。 UAEやカタールでは、外国高等教育機関の分校に対して第三者質保証機関が適格認定や監査を行う状況があるが、提供国の質保証機関や国際的な専門職業団体から国際的な基準や本校との同等性を満たすことが求められる状況がある一方、イスラームや現地社会の要素を機関の質に反映させることが受入国の質保証機関から求められることで、多方面から要求される教育の質のあり方を調整することに奮闘している状況が明らかになった。 これらの成果は、中島悠介「エジプト高等教育における国家教育質保証・適格認定機構の役割と課題」『地域連携教育研究』第3号、京都大学学際融合教育研究推進センター地域連携教育研究推進ユニット、2018年、pp.48-60および中島悠介・保道晴奈「アラブ・オープン大学のトランスナショナルな制度的展開に関する一考察」『大阪大谷大学紀要』第53号、大阪大谷大学志学会、2019年、pp.127-139などにおいて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、エジプトやUAE、カタールといったアラブ諸国を対象に、第三者質保証機関をはじめとして、政府部門に近い位置づけにある高等教育質保証に関わる機関を特定し、その設置の背景や機関としての役割、評価項目の特徴やローカルな文脈での適用について明らかにすることを目的としていたが、ある程度達成することができたと考えられる。上記の研究成果を公表することができたことに加え、平成31(令和元)年度には、高等教育機関の内部質保証の仕組みと重点の検討を進めることを予定しているが、クウェイトにおけるアラブ・オープン大学の内部質保証の様相や、UAEやカタールにおける海外分校の質保証の取り組みにも踏み込むことができ、本研究における次のステップにも進むことができた。今後も継続してこれらの調査を進めていきたい。 一方で、特にエジプトやほかのアラブ諸国では、政情不安等により実際に現地を訪問してインタビュー調査をしたり、文献収集を実施することが困難になる可能性がある。その際には、すでに関係を構築している高等教育機関の教職員を中心に、E-mail等で連絡をとり、規模・属性をある程度網羅した形で機関数を限定して定性的調査を実施し、個々の機関・人々の文脈に沿った形でより理解を深めることで対処する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、申請者がこれまでに関係を構築しているエジプトおよび湾岸諸国における高等教育機関の内部質保証の仕組みを明らかにしていく。特に、国家的な第三者質保証機関に対応する形で、どのように高等教育機関の内部質保証の仕組みが整備されているのか、学部や専門分野に応じた取り組みや、どのように質保証の中でローカル性が重視されているのかといった点を考察していきたい。具体的には、アズハル大学における伝統的なイスラーム教育や、国家の権限が強いUAEの連邦立大学の教育研究や組織構造などに焦点をあて、大学内部でどのような質保証の仕組みが整備されうるのかを検討していく。 この目的のため、すでに収集しているアラビア語・英語の質保証関連の文献資料を分析するとともに、アズハル大学やエジプトにおけるその他の公立・私立大学、またUAEやカタールにおける高等教育機関の質保証関係者へのインタビューを実施することで、機関として質保証にどのように対応しているのかを明らかにする。これらの機関における質保証関連教職員および比較教育学に関係する教職員とはすでに関係を構築しており、当該大学に訪問してインタビュー調査を実施する予定である。 また、次年度の研究の準備を進めるため、アラブ諸国の高等教育機関の質保証に関わりうる要素として、Times Higher Educationなどが実施する国際的なランキングや、専門誌が実施する専門分野別のランキングに関する文献・資料を収集し、分析を行う。また、それらのランキングや評判といったものが、高等教育機関の質保証の取り組みにどのように反映されるのかといったことについて、予備的な調査を実施する予定である。
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